組島壊音

「……っ」

赤噛未白

「組島くん……？」

組島くんは苦しそうに眉を顰め、自分の手や体を押さえていた。
心配になって思わず一歩近づくと、鋭い目つきで睨みつけられる。

組島壊音

「近づくな！」

赤噛未白

「どうしたの？　大丈夫？」

組島壊音

「来るなって言っただろ。なんで来るんだよ……！」

赤噛未白

「ご、ごめん――」

赤噛未白

（そんなに嫌がられてたなんて、思わなかった）

赤噛未白

「もう行くね」

そう言って踵を返そうとしたとき、組島くんが私の方に手を伸ばした。

組島壊音

「俺に近づいたお前が悪い」

赤噛未白

「！？」

組島くんの腕が私の腰に絡みつく。
そのまま、引き寄せられた。

組島壊音

「――」

赤噛未白

「――っ」

組島くんが私の胸元に顔を埋めて、歯を立てた。
驚きと痛みで、体が固まる。

赤噛未白

（なんで、噛んだりなんて――）

赤噛未白

「や、嫌！」

気づいたときには、組島くんの顔を平手打ちしていた。

組島壊音

「――」

赤噛未白

「あ……ご、ごめん」

組島壊音

「……早くどっか行け」

組島くんはそう言うと、私から離れた。
その姿が傷ついているように見えて、思わず手を伸ばす。

赤噛未白

「組島くん――」

組島壊音

「早く行け！」

赤噛未白

「――っ」

伸ばしかけた手を戻す。

赤噛未白

（組島くん、現実とはなんだか様子が違う）

赤噛未白

（組島くんの言う通り、私はここにはいない方がいいのかもしれない）

私はそう考えると、組島くんに背を向けて歩き出した。