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息つく間もなく、頭上に色とりどりの大輪の花が咲いては消えていく。
赤噛未白
「キレイ……!」思わず見とれていると、見物客の一人にぶつかった。
赤噛未白
「――っと、すみません」善野世裏
「大丈夫?」赤噛未白
「この人混みがなければ最高なんですけど」善野世裏
「満員電車みたいだね」苦笑いしていると、再び別の見物客に押されてよろける。
また混んできたようだ。
押されたことで、世裏さんにもたれかかるような形になってしまう。
赤噛未白
「――すみません」善野世裏
「そのまま寄りかかってて大丈夫だよ」そう言って、世裏さんが私を支えながら少し体を移動した。
すると、見物客とぶつかることもなく、前にわずかながら空間ができる。
赤噛未白
(さっきより楽になった……? あ、世裏さんが壁をつくってくれてるんだ)私の体を包むようにして、世裏さんがガードしてくれていた。
おかげで、私のそばを見物客が通ることはない。
赤噛未白
(すごく楽だけど、なんだか、これって抱きしめられてるみたいな……)世裏さんに触れているところが、やけに熱く感じる。
赤噛未白
(そう考えたら、全然花火に集中できない)変に思われないように花火を見上げながらも、世裏さんのことが気になってしょうがなかった。
善野世裏
「未白ちゃん? 大丈夫?」赤噛未白
「――」背後にいる世裏さんの声が耳元で聞こえて、びくっと体が震える。
息がかかってくすぐったい上、そんなに間近にいるということを、余計に意識してしまう。
赤噛未白
「世裏さんこそ、大丈夫なんですか」善野世裏
「え? 何が?」赤噛未白
「その、こんな、くっついた状態――」私がもごもごと話していると、花火の轟音があっという間にかき消してしまう。
善野世裏
「ごめん、何?」赤噛未白
「なんでもないです……」赤噛未白
(世裏さんにとっては、こんなの気にするほどのことじゃないのかも)意識しているのが自分だけというのがわかって、何も言えなくなってしまう。
世裏さんは少し不思議そうな顔をしながらも、それ以上詮索しなかった。