騎士の制止の声で、パールとリッチーに
駆け寄りかけたザラの動きが止まる。
彼らに逆らってはいけない。
逆らえば、何をされるかわからない。
彼らは入り口の両脇を固め、
危険がないことを確認した後に、
外側に向かって合図する。
その合図を待つようにして、
部屋に入ってきたのは、場違いなほどににこやかな
笑みを浮かべた王子、オージェだった。
- フィオナ
- 「……っ!」
この異常な状況下では、いつもと変わらないオージェの
笑顔が逆に怖い。
思わず、近くにいたネッソのマントを指先で
手繰ってしまっていた。
- オージェ
- 「やあ、フィオナ。
久しぶりだね。」
- フィオナ
- 「オージェ……?」
- オージェ
- 「楽しい夕食の邪魔をしちゃってごめんね~。
おれもあんまり手荒なことをしたくはないんだけど。
魔女を捕まえに来たよ。」
- フィオナ
- 「魔女……?」
嫌な予感がした。
この部屋の中に、女は私しかいない。
そして何より、オージェの視線はまっすぐに
私に注がれている。
- ネッソ
- 「殿下……!!
いくら殿下といえど、このような訪問が許される
はずがありません!」
- ネッソ
- 「どうぞ、親衛隊の方を連れお引取りください!
ここは妹の部屋です!」
- ネッソ
- 「女性の部屋に土足で踏み入るなど、
騎士の振る舞いではありません!」
- オージェ
- 「まあ、おれは騎士じゃなくて王子だからいいのかな、
その前に宮廷楽師だしぃ?」