彼の腕にすがった手を逆に
強く引き寄せられて、バランスを崩す。
次の瞬間には、私は彼の下に
抱き込まれていた。
真上には、
隻眼の蒼をぎらぎらと光らせたラス。
- ラス
- 「オレは狼種だ。
なのに、なんでオマエは怖がらない……っ。
逃げない……!」
- ラス
- 「オレを嫌え。オレをさげすめ。
オレに近づくな。オレに触れるな。」
- フィオナ
- 「……っ!」
- ラス
- 「……っ!!」
何をどうして、こうもラスが
混乱しているのかが私にはわからない。
私にできるのは、ただいつもの彼に
戻ってくれないかと、
名前を呼び続けることぐらいだ。
- フィオナ
- (何もできない……!)
ラスが苦しそうなのに。
今にも息が止まってしまいそうなほどに、
苦しそうに呻きながらも言葉をひとつひとつ
吐き出しているのに。
私には何もできない。
それが悔しい。