火にかかってしまわないよう慎重に、ザラが毛布を広げて
私ごとくるむように背にかけてくれた。
焚火を前に、ふたり並んで座って、
一枚の毛布にくるまる。
- フィオナ
- 「……ふふ。」
- ザラ
- 「どうかしましたか?」
- フィオナ
- 「ううん、なんでもないの。
昔読んだ本を、ちょっと思い出しちゃって。」
- ザラ
- 「どんな本なんです?」
- フィオナ
- 「子供向けの冒険小説よ。
主人公たちが、無人島でちょうどこんな風にして、寒さをしのぐシーンがあるの。」
一枚の毛布をわけあってくるまって、
焚火に当たって暖をとるのだ。
そして、星を眺めながら他愛もない話をする。
- ザラ
- 「ああ、それなら僕も読んだことがある気がします。
確か舞台は南の島じゃありませんでしたか?
海で遊んで、夜になったら冷えてきてしまって……。」
- フィオナ
- 「そうそう、たしかそういうシチュエーションだったわ。
遊び疲れて、ふたり肩を寄せ合ったまま眠ってしまうのよ。」
- ザラ
- 「ええ、覚えています。
彼らが食べる鳥の丸焼きが、やたら美味しそうで……。」
- フィオナ
- 「そうそう!
読みながら、いつか私もそんな大冒険がしてみたい、なんて思っていたっけ。」
- ザラ
- 「……ふふ。
思わぬ形で実現してしまいましたね。」
- フィオナ
- 「そうね。
南の島ではないけれど。」
- フィオナ
- (どちらかというと、北だし)
- ザラ
- 「……そうですね。
鳥の丸焼きもないですしね。」
- フィオナ
- 「ふふ。」
- ザラ
- 「……ふふ。」
眠っている他のふたりを起こしてしまわないように、
ひそひそと言葉を交わして小さく笑う。
重なった肩から伝わるぬくもりが、
温かくて気持ちいい。
こつん、と頭を預けてそのぬくもりを堪能する。
狭い毛布の中で、ふたり分の体温が柔らかに循環している。
- ザラ
- 「……もう、眠くなってしないましたか?」
- フィオナ
- 「……うん。
こうしてるだけで、温かくて気持ちいいんだもの。」