- フィオナ
- 「――……っ!!」
悲鳴が喉でつっかえる。
耳元で渦巻く風の音。
こんな高さから飛び降りれば、
無事ではすまないだろう。
眼下に広がるのは、シャルメッセンの森だ。
ガーランド家の敷地を囲むように広がる
美しい森。
私はいつだって、
いつかその森を訪れることを夢見ていた。
ぐんぐんとすごい勢いで近くなる、
色鮮やかな緑。
ここで死ぬのだと思うと、
妙に頭の中が冷静になってしまった。
- フィオナ
- (一応……。夢が叶ったってことになるのかしら)
こんな形ではあるけれども。
- フィオナ
- 「……ふふ。」
馬鹿みたいだ。
こんな状況で、夢が叶ったも何もない。
自分の突拍子のなさに、つい笑ってしまう。
- ラス
- 「……?」
訝しげな視線を、
向けられたような気がした。
もしかしたら、恐怖のあまりにおかしくなったのだと
思われてしまったのかもしれない。
けれど――……思わず笑ってしまうほどに、
私の眼下に広がる世界は、美しかったのだ。
そして、世界は暗転した。