- 車内アナウンス
- 「まもなく発車します。入口付近のお客様は立ち止まらずに奥へとご乗車ください」
- 石動大我
- 「うお、何だこの混雑っぷりは……」
- 東条ヒバリ
- (何よこれ……!どうしてこんなにも人がいるの!?)
- 石動大我
- 「あー……そういや今日、どっかの学校が学園祭やってんだっけ」
- 東条ヒバリ
- (人が立てるスペースなんてもう無いのに。まだ乗ってくるなんてどうかしてる!)
- 石動大我
- 「お嬢、ひとまずそこのドア背にしとけ。 前後から押しつぶされるよりマシだろ」
- 東条ヒバリ
- (人間のパーソナルスペースは平均50センチでしょ。どうしてこんな状況でみんな平気なわけ?)
- 東条ヒバリ
- (こんなの……拷問だわ!)
制服にスーツ、色んな服装の人がこれでもかというほどに乗ってくる。
大我さんに言われるまでもなくすでに私は背中をドアに押し付けていた。
すぐそばで、誰かの息遣いを感じる。
微かに鼻をくすぐる、自分とは違うにおい。
そして、人肌の温もりまで……。
嫌でも他人の存在を意識してしまう。
大切な何かを一気に失ってしまった気分だ。
何より私がそう思ってしまう原因は、目の前にあった。