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私の記憶は、5歳のころ。
- 東条鷹宗
- 「……いつまでそうしておるつもりじゃ」
- 東条鷹宗
- 「まともに飯も食っておらんそうじゃな。腹は減らんか」
- 東条ヒバリ
- 「…………」
- 東条鷹宗
- 「……ふん」
鎌倉の本家にいるところから始まっている。
薄暗い、馴染みのない広い屋敷に、たったひとり。
どうしてここにいるのか、それさえもよくわからないまま、ぼんやりと座っていた。
聞かされたのは、父も母ももういないということ。
これからは、この屋敷が私の家だということ。
私はこの大きな家――東条の跡継ぎで、そのために必要な教育を受けなければいけないということ……。
私の祖父だというその人は、当時の私にとってはよく知らない他人でしかなかった。
この人が私を引き取り、家族になったのだと言われても、よくわからないままだった。
厳しい、怖い顔。
懐くどころか、恐怖の対象でさえあり、私は祖父が近づく度に泣いていた。
この人が味方だなんて、とても思えなかった。