- 光森壱哉
- 「クッキー焼いたんだ。よければ、お友達と一緒に食べて」
- 東条ヒバリ
- 「…………!」
- 光森壱哉
- 「……驚かせてごめん。でも今の俺は君が思っているほど、余裕がないんだ」
- 光森壱哉
- 「いつもなら学校に押しかけたりしない。……でも、俺にしかできない方法はこれしか見つけられなくて」
- 光森壱哉
- 「……俺だけにできることで、君に振り向いてほしくて」
可愛く丁寧にラッピングされたクッキー。
これも、彼が色々と考えて準備したのだろう。
そう思うと無下にはできず、そっと包みに手を伸ばす。
手を引かれる感覚に、思わず壱哉さんの顔を見る。
壊れ物に触れるように、優しく握られる手。
いつも自信満々な彼からは想像もできないくらい、そっと。
壱哉さんの発した予想外な――けれど、真剣な言葉に息を呑む。
そう言う壱哉さんの苦笑いが、私には少しだけ痛々しく思えた。