オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful White World~』公式サイト
- 双子が、自分達の座っていたボックス席へ私を引っ張る。
斧は持っていないが、椅子に立て掛けられていた。
- ブラッドが座るのは、通路を挟んだ反対側のボックス席だ。
その対面が、ハンニバルの座っていた席だろう。
- アリス=リデル
- 「ええと……お邪魔します。
迷惑じゃなかったかしら」
- 押さえ込まれるようにして座りながら、
この場のもう一人のトップであるブラッドに声をかける。
- ブラッド=デュプレ
- 「迷惑なはずがあるものか。
あまりに退屈で、私もうんざりしていたところだよ」
- ブラッド=デュプレ
- 「このような場所では紅茶も楽しめない……
夜だというのに紅茶が飲めないとは……」
- ハンニバル=ゴールド
- 「おいおい、その言い様はあんまりじゃねえか。
この場所を指定したのはおまえのほうだろうが」
- 立ったまま、ハンニバルは苦笑する。
ブラッド相手にも委縮することなく、
同じ領主として対等に接しているようだ。
- アリス=リデル
- (こうして見ていると、やっぱり強そう。
貫禄があるわよね。
……完璧な装いだわ)
- ブラッド=デュプレ
- 「好き好んでこの場所にしたわけではないさ。
黒の城へまで足を運ぶのはだるいが、
おまえとて我が屋敷に招かれても困るだろう」
- ブラッド=デュプレ
- 「相手方への配慮も兼ねているんだぞ?
おまえこそ、ずいぶんな言い様じゃないか?」
- ハンニバル=ゴールド
- 「……はは、手厳しいねえ」
- つまり、ブラッドも本意ではないが、必要に駆られこの場で会談を設けているらしい。
- アリス=リデル
- 「この汽車、もしかして貸し切っているの?」
- 思えば、通ってきた個室車両からも
人の声などは一切聞こえてこなかった。
- ブラッド=デュプレ
- 「ああ、そうだよ。乗客は私達だけだ」
- ブラッドはあっさりと答える。
- アリス=リデル
- 「汽車を一本丸ごとって……、すごいわね。
でもどうして?」
- トゥイードル=ディー
- 「簡単なことだよ! 汽車を貸し切りにすれば、
手っ取り早く密室が作れるでしょう?」
- トゥイードル=ダム
- 「そうそう! 内密の話をするにはうってつけ!」
- 黙って聞いているのに飽きたのか、双子が得意げに説明を始めた。
- トゥイードル=ディー
- 「他の場所を借りることだって出来るけど、
街中じゃ、どこで間者が聞いてるか
分かったものじゃない」
- トゥイードル=ダム
- 「僕達の屋敷や黒のお城でも同じ。
誰が紛れ込んでくるか分からないからね」
- トゥイードル=ダム
- 「でも貸し切った汽車なら僕達以外は
存在を知らないし、万一誰か入り込もうとしても
簡単に察知出来る」
- トゥイードル=ディー
- 「そもそも、走り出してしまったら誰も乗ってきようがないしね!」
- アリス=リデル
- 「な、なるほど……」
- アリス=リデル
- (言われてみれば、まあ……筋は通っている?)