オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful Black World~』公式サイト
- ハンニバル=ゴールド
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「……礼はいい。あんたのためでもあるが、何より俺のためにやったことだ」
- ハンニバルの体が近付き、ふっと視界が陰った。
がっしりとした両腕が、その印象とは裏腹に優しく私の体を包み込む。
- ハンニバル=ゴールド
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「礼なんかいいから……どこにも行くんじゃねえぞ」
- アリス=リデル
- 「……!」
- ハンニバル=ゴールド
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「あんたはどこにもやらねえ。
帽子屋の挑戦を受けると決めたときに、それも決めた」
- ハンニバル=ゴールド
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「あんたはもう黒の城の一員だ。
これからもずっとうちにいろ。
どこにも行くな」
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同じ言葉を繰り返す。
静かな口調だが、こもる思いの強さが窺えた。
- アリス=リデル
- (どこにも……)
- アリス=リデル
- (それは他領土っていうこと?
それとも、もっと他の意味もあるの?)
- そう尋ねたら、彼はなんと答えるのだろうか。
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尋ねてみたい。
でも、出来なかった。
-
聞いたとしても、私もどんなふうに答えていいか分からないから。
- アリス=リデル
- (だけど、今このときの気持ちでいいなら……)
- アリス=リデル
- 「……私も、どこにも行きたくないわ」
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ハンニバルが勝って心底安堵したし、嬉しいと思っている。
黒の領土を出なくてはいけないようなことにならなくてよかったと。
- アリス=リデル
- 「ここにいたい」
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そっと、広い背中に腕を回す。
- アリス=リデル
- (この人の傍に……)
- ハンニバル=ゴールド
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「ああ。ここにいてくれ」
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ハンニバルの腕にも力が込もった。
しっかりと抱き返してくれる。
-
今、この夜だけでいいなら……
このまま二人きりで、ずっとこうしていられたらいい。
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そう、強く願った。