オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful Black World~』公式サイト
- アリス=リデル
- 「あなたが前に夢の中で出した時計……
あれは、ペーターの物だったのね」
- まず聞きたいのはそのことだった。
驚きが勝っていると、他の情報はいつも後回しになってしまう。
- だから、目覚めてから気付いた。
前に私が体調不良を起こしたときにも、このベッドを借りて眠らせてもらったことがある。
- あのときも夢の中でナイトメアと話し……、彼は金色の懐中時計を出して、私に見せた。
- 針が回り続けている、壊れた時計。
いずれは私も、それと同じようになるのだと言って。
- アリス=リデル
- (『自分達と同じように』とも言っていた)
- アリス=リデル
- (結局あの夢でも、目覚めて一緒に仕事を再開してからも、あれ以上は何も説明してもらえなかったけど……)
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「そうだよ。見覚えがあったのは当然。
あれは白ウサギの時計だ」
- アリス=リデル
- 「……あのときは気付けなかったわ。
今思い出すと、ウサギ姿のペーターが夢に姿を現したとき、提げていたけど」
- 姿を見たのは一度だけ。
- しかしそれも、初めて姿を見たことや会話に意識が向き、彼が時計を提げているという記憶は薄れてしまっていた。
- アリス=リデル
- (人型のペーターが提げているものはもっと大きかったけど、それも後から気付いた。
記憶があれば、すぐに分かったんでしょうけど)
- アリス=リデル
- 「……どうしてあなたがペーターの時計を持っていたの?」
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「持っているわけではない。
私は単に、その像を形にしただけだよ。
映像にして見せただけだ」
- アリス=リデル
- 「え……、実物ではないということ?」
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「ああ。白ウサギの時計は、彼が持つあれ一つしか存在しない。
だが、夢でならその形を具現化することは出来る」
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「この世界、時計は溢れるほどに存在しているが、形として見せるなら君に最も馴染みの深い時計で見せてあげようと思ってね」
- アリス=リデル
- (溢れるほどに?
私は見たことがないけど……)
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「…………」
- 疑問を抱くが、ナイトメアは答えてくれない。
気付いていないはずはないのに黙っている。
- アリス=リデル
- (今はまだ、説明してくれないということ?)
- 意味不明なことを言ったり、曖昧で煙に巻くようなことを言ったり、もったいぶったり。
彼に限ったことではなく、この世界の住人は大体がそうだ。
- 諦めて、他の言葉を口にする。
- アリス=リデル
- 「……あなたって本当、夢の中でならなんでも出来るのね」
- つまりあの時計は、夢魔の力によるホログラムのようなものだったということだ。
ほんのりと発光していた、掌サイズの時計を思い出す。
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「夢魔だからね。
現実では出来ないことやままならないことも、夢の中でなら可能だ」
- ナイトメア=ゴットシャルク
-
「夢ほど優しい世界はないよ。
同時に恐ろしい世界でもあるが……、私にとっては優しい世界だ。
現実などより、余程ね」