オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful Black World~』公式サイト
- アリス=リデル
- 「……ごめんなさい。気付いたらここを歩いていたから、てっきり夢だと」
- アリス=リデル
- (無意識のうちに、なんて……。
とんでもない彷徨いっぷりだわ。
エースを馬鹿に出来ない……)
- エース
-
「はは、そっか。
それなら誤解させたままでもよかったかもな。
夢だと思ってたほうが、君って脇が甘そうだから」
- アリス=リデル
- 「は……」
- アリス=リデル
- 「何よ、それ。もし私の脇が甘かったらどうだっていうの」
- からかうような言い方に、つい語調を強める。
- エース
-
「おっと、怒らないでくれよ?」
- エース
-
「だって俺はまた前みたいに仲良くなっていきたいのに、今の君は忘れちゃっている分そっけないし、隙もみせてくれないからさ」
- エース
-
「でも夢だと思っていれば……、少しくらい強引に近付いたり、悪戯したりしても、許してくれそうだ」
- エース
-
「ハートの国に来たばかりの頃の君はそういう感じで、割と色々流してたからね」
- アリス=リデル
- 「…………」
- アリス=リデル
- 「……あなた、強引に近付いたり、悪戯したいの?」
- 爽やかにあっけらかんと、臆面もなく言い切る。
こういう人だからこそ、彼に「強引」とか「悪戯」なんて言われると逆に怖い。
- エース
-
「もちろん、したいよ」
- エース
-
「こういうのとか……怒られないなら、ずっとしたかったんだぜ?」
- アリス=リデル
- 「……!」
- 片手を腰に回し、引き寄せられた。
顔を寄せ、耳元で吐息を吹き込むように話され、ぞくりと震えが走る。
- エース
-
「これくらいの近さは怒らないでいてくれるよな?」
- エース
-
「寂しいから慰めてくれ、とか、寒いから温めてくれ、とかさ。
もし俺が言ったとしても、今の君は応えてくれないだろうから」
- エース
-
「それでいいから……これくらいは、許してくれよ」
- アリス=リデル
- 「っ……」
- 話されるたび耳に息が掛かり、くすぐったい。
ぞくぞくするのに逆に体はどんどん熱くなっていくようで、よく分からない感覚に混乱する。
- だがそんな中でも、エースが「今の私」という表現を繰り返したことは気に掛かった。
- アリス=リデル
- 「……以前の私だったら応えたっていうこと?」
- 私が過去を忘れたこと、変わってしまったこと。
エースだけは悲しみ、責めるようなニュアンスを、最初から覗かせていた。
- 今もやはり、彼は秘めようとしていない。
なぜ忘れてしまったんだ、と責められている。