オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful Black World~』公式サイト
- アリス=リデル
- (あれ……あそこにいるの、グレイ?)
- グレイ=リングマーク
-
「…………」
- 通りに面したオープンテラスのあるカフェ。
席の一つに、見知った姿を発見する。
一人のようだ。
- グレイ=リングマーク
-
「…………」
- テーブルの上には恐らくコーヒーの入ったカップ。
仕事の資料だろうか、手帳サイズのノートを片手に持ち、目で追っている。
- そして、もう一方の手には煙草。
- アリス=リデル
- (……吸っているところをちゃんと見るの、初めてかも)
- 彼が喫煙者だというのは知っている。
- 最初は近付いたとき、服に着いた残り香を感じて気付いた。
駅に移ってくるよりも前、まだ客として遊びに来ていた頃のことだ。
- 滞在を始めてからは、何度か吸っているのを見掛けたことがある。
- だが、ほんの一瞬。私に気付くと、グレイはいつもすぐに煙草を消していた。
- グレイ=リングマーク
-
「…………」
- わずかに目を細め、ゆっくりと煙を吐き出す。
二、三度繰り返すうちに煙草は短くなった。
- 灰皿に押し付けて消すと、ポケットから煙草のケースを取り出す。
新たな一本を咥え、火を点けた。
- グレイ=リングマーク
-
「…………」
- アリス=リデル
- (おいしそうに吸うなあ……)
- おいしそうな顔だ。
だが、同じく煙草を吸うナイトメアとはまた違う表情。
- ナイトメアはどこか芝居がかっていて、大げさに見えていた。
けれどグレイは自然というか……。
- そして、おいしそうなのだが気怠げでもある。
なんの特別感もなく、煙草を口に運ぶ仕草をやや気怠そうに繰り返すのだ。
- アリス=リデル
- (なんていうか……大人)
- 漂う空気が大人だ。
成熟した大人しか出せない空気感。
- 大人しかしてはいけないことが、完璧なまでに似合っている。