オトメイト『スペードの国のアリス ~Wonderful Black World~』公式サイト
- ジョーカー
-
「やあ。いらっしゃい……っていうお客様相手の挨拶は、もういらないかな。
待っていたよ、アリス」
- ジョーカー
-
「……マジで来やがったか。
とことん頭のイカれた女だぜ」
- 店内には同じ顔、同じ服装をした二人。
今はカウンターの奥ではなく、二人共外に出ている。
- アリス=リデル
- 「ええと……お世話になります」
- 予想はしていたが、正反対の反応。
どちらに合わせたものかと悩みつつ、とりあえずは礼儀正しく一礼した。
- ジョーカー
-
「ふふ、畏まらなくていいよ。
これからはここが君の家なんだ、リラックスして」
- ジョーカー
-
「荷物はそれだけ?」
- 私が手にしていたのは、片手で持てるサイズのトランク一つ。
少し驚いた顔で問われる。
- アリス=リデル
- 「ええ、これだけよ」
- ジョーカー
-
「はん、相変わらず欲も色気もねえ女だな。
そんな荷物じゃ着替えも入らないんじゃねえのか」
- アリス=リデル
-
「失礼ね、着替えは入っているわ。
……寝巻だけだけど」
- ジョーカー
-
「寝巻? そりゃ着替えとはいわねえだろ」
- アリス=リデル
- 「っ……、いいじゃないの。
そもそもこの世界じゃ勝手に綺麗になるんだから、着替えもいらないじゃない」
-
頻繁に着替えなくても、汚れた服は放っておけば自然と綺麗になっている。
体もそうで、気にしなければ入浴も洗濯も必要のない世界だ。
- アリス=リデル
- 「大体、そういうあなただっていつも同じ服でしょう」
- ジョーカー
-
「ああ? この服のことを言ってんのか?」
- アリス=リデル
- 「そうよ。あなたのそれだって一張羅なんじゃないの?」
- ジョーカー
-
「この服が一張羅だって? んなわけねえだろ」
- ジョーカー
-
「こんなもんはジョーカーに付き合って仕方なく着てやってるだけだって、前にも言っただろうが」
- アリス=リデル
- 「仕方なく着ているにしたって、結局いつもそれじゃない」
- ジョーカー
-
「いつもじゃねえ。
今のおまえはこの格好しか知らないだけだろ」
- ジョーカー
-
「こんな服、着てるだけでむず痒くなる。
早く脱ぎたいくらいなんだよ、俺は」
- アリス=リデル
- 「あら、そう? 似合ってはいるわよ」
- ジョーカー
-
「んなことは言われなくても分かってる。
俺様は何を着たって似合うんだよ、元がいいからな!」
- アリス=リデル
- 「ええ……」
- アリス=リデル
- (もう、褒めても怒るの?)
- ジョーカー
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「はいはい、苛々しない、ジョーカー。
到着早々喧嘩なんてよくないよ?」
- ジョーカー
-
「やっと来てくれたお姫様なんだから、優しく迎えなくちゃ。
怖がらせたり、悲しませたり、怒らせちゃ駄目だろう?」