- アラン
- 「っ……」
- カタリナ
- (いたたたた……)
- 私とアランは、二人して転んでしまった。
けれど後ろにちょうどソファがあったおかげで、そこまで痛くはない。 - カタリナ
- (良かった……それより、すぐに起きなきゃ――)
- と思って視線を上へ向けて、私はそのまま固まった。
- カタリナ
- 「…………へっ?」
- ――すごく、すごく近くにアランの顔があった。
- アラン
- 「っ……、お前な、そんな所掴むなよ! 首が絞まるかと思っただろ!?」
- カタリナ
- (あっ、ほんとだ……)
- 転びそうになった時に掴んだのは、どうやらアランの胸ぐらだったようだ。
- カタリナ
- 「い、いや~すみません。ついとっさに掴んでしまって……」
- 慌てて離すけれど、アランは動かない。
苛立った表情のまま、私を見下ろしている。 - アラン
- 「これで、充分わかっただろ。海賊がいる時にこんな間抜けなことになったら二人して死ぬかもしれないんだ」
- アラン
- 「だからお前はここに――」
- カタリナ
- 「えっ、いやでもほら、私一人なら平気かも……」
- アラン
- 「まだそんなこと言っているのかお前は! ――相手は海賊なんだぞ!」
- どうやら今の言葉でアランに火をつけてしまったようだった。
私の腕をぐっと上から押さえつけてアランが顔を近づける。 - アラン
- 「海賊なんかに女のお前がもし捕まったりしたら、どうなるか分かってるのか……!?」
- カタリナ
- 「へっ!? いや、あの――」
- カタリナ
- (それより近い近い近い……!!)
- いまだかつてないアランのドアップに、私はその場で完全にフリーズしてしまった。
息遣いが感じられるような距離だ。
そのせいで息をするのも、ためらわれてしまう。 - カタリナ
- (い、いや確かに土ボコ程度しか使えない私じゃ何もできないかもしれないけど~~~)
- それよりこの距離は近すぎる。
早く、上からどいて欲しい……! - カタリナ
- (うう……)
- 間近で見ると、アランの顔も凄い威力だった。
意識していなかった整った顔が、目の前に迫っている。
おかげでアランもまた乙女ゲームの攻略キャラだったんだと思い出してしまった。
本当に心臓に悪い。