- ジオルドにエスコートされ、私は空腹のまま彼と踊ることになってしまった。
- カタリナ
- 「あの、ジオルド様。私、料理が――」
- ジオルド
- 「カタリナは、本当に愛らしいですね」
- カタリナ
- (話が噛み合わない……)
- しかも、なかなか解放してもらえない。
一曲終わってさあ退散と思うと、ジオルドに腰を抱き寄せられる。
そんな強引なエスコートにより、すでにダンスは三曲目に突入していた。
パートナーを変えずに踊る場合は一曲か二曲で終えるのが普通だったと思うんだけれど――。 - カタリナ
- 「というか、ご飯……」
- ジオルド
- 「――あと一曲だけ。クイードの人間にも認知させておく良い機会ですからね」
- カタリナ
- (認知させておく? 王子だって事をかしら? いやでもさっきジオルドは挨拶してたし……)
- ジオルド
- 「君が、僕のものだという事をですよ」
- くすっと笑ってジオルドが優雅に踊っていく。
周囲から、ほうっと感嘆のため息が聞こえてきた。 - ジオルド
- 「それにしても相変わらず愛らしいですね。可愛い僕のお姫様」
- なんて、ジオルドは歯が浮く台詞をすらすらと囁く。
うん。さすが乙女ゲームの攻略対象だ。
でも相手を間違えてますよと言いそうになる。
乙女ゲームの主人公は、マリアのはずなのだから。 - カタリナ
- (本当にみんなマリアに恋をしてないのかしら? マリアはあんなに魅力的な女の子なのに)
- もしかしたら、この船旅で彼女との恋に目覚めるかもしれない。
その時は精一杯、応援しよう。 - ジオルド
- 「また僕の可愛い婚約者は、妙な事を考えているみたいですね。でも今だけは、僕を見てくれませんか?」