- 私と並んでソファに座って、ロジーがその球体を手に取る。
何が始まるのだろうと思っていると、ロジーはその明るい魔法石を、透明な球体に近づけた。
すると――。 - カタリナ
- 「あっ、回った!!」
- 手元にある透明な球体の中の羽根車が、ぐるぐると回り始めたではないか!
- カタリナ
- 「すごい、どうなってるのこれ!」
- ロジー
- 「羽根車の片側だけが黒く塗られてるんだけど、そこに熱を含んだ光を当てると回りだすようになってるんだ」
- ロジー
- 「ソルシエの魔法石を見て、うまく光エネルギーを運動エネルギーへと変換できないかと思って作ってみたんだけど……」
- カタリナ
- 「えっ、これロジーが作ったの!? しかも船の上で!?」
- ロジー
- 「う、うん。船の上だと何があるか分からないなって思って――」
- カタリナ
- 「すごい!! ロジーって何でもできるのね!」
- こんなにすごい道具まで作れるなんて、本当にロジーは技術者なんだとしみじみと実感する。
魔法石を借りて自分でも当ててみると、くるくると羽根車が勢いよく回り始めた。 - カタリナ
- (おおおお! 遠ざけると少し遅くなって近づけると早くなったわ!)
- これは楽しすぎる。
はしゃいでいろんな角度から魔法石を当てていると、クスッと笑う声が聞こえてきた。
横を見ると、ロジーは眩しい物を見るように目を細めて私を見ていた。 - ロジー
- 「……カタリナは、すごいね」
- カタリナ
- 「へっ? なんで?」
- ロジー
- 「いつも、俺を嬉しくさせてくれるから」
- ふとロジーの表情が真剣みを帯びて、そっと手が伸びてきたと思ったら頬を撫でられた。
硬い指先ですっと撫でられて、少しくすぐったい。 - カタリナ
- (急にどうしたんだろ? 頬に食べかすでもついてたかしら)
- 生姜湯に入っていた生姜のかすでもついていたのかもしれないと思っていると、ロジーの顔が近づいてきた。
- ロジー
- 「ねえ、カタリナ。俺はさ。ずっと君と――」