- シルヴァ
- 「っと。やっぱ危ねぇな。……めんどくせぇし、俺が運ぶほうが手っ取り早そうだな」
- カタリナ
- 「……へっ?」
- 運ぶという言葉に、また米俵みたいな扱いをされるのかと焦ったその時、ふわっと身体が浮いた。
- カタリナ
- 「うわぁ!?」
- 膝の裏と背中に手を回されて、シルヴァ――らしき人と密着する。
- シルヴァ
- 「ほら、カタリナ。手を首に回しとけ。その方が安定すんだろ」
- カタリナ
- (え、えーっと、首って言っても……)
- 見えない中でどうすればいいのかと探り探り手をのばすと、ようやく首っぽいものに触れた。
- カタリナ
- 「え、え~と、こう……?」
- ぎゅっと首っぽいところに手を回して抱きつくと、わずかに汗ばんだ肌と触れてしまった。
- カタリナ
- 「……!」
- いつも抱きついているマリアやメアリたちとは違う、男の人の素肌だ。
石鹸の香りのなかに、かすかに汗の匂いを感じて少しだけドキリとする。
はじめて嗅いでしまった、男の人の匂い。
キースとかとは全く違う。 - シルヴァ
- 「じゃ、行くぞ。しっかり掴まっとけ」
- カタリナ
- 「ええ……」
- 歩き始めた揺れを感じて、落ちないようにぎゅっとしがみつく。