アベル「まぁ詳しい話は戻ってからしよう。さぁ、帰ろう」
ラン「……え」
アベル「え?」
ラスティン「どうしたの?」
パシュ「ほら早く帰ってその傷の消毒しないと!」
ニケ「大丈夫!?」
ラン「ニケ!」
ニケ「ご、ごめん、手当の道具の準備してたら遅くなって……遅い……よね?」
ラン「……み、んな……っ」
足が一歩も動かなかった。
代わりに涙が溢れてきて、みんなの前で泣くなんて物凄く恥ずかしいのに手が動かない。
ユリアナ「……どうしたの?あ!?も、もしかして私が鈍いから一緒の部屋が嫌になった!?」
パシュ「あー、そうかもな」
ラン「ちが……───」
帰ろう、と。
当然のように口にされたことが嬉しくて泣いてしまったなんて言えない。
『迎えに来てもらえたこと』が嬉しいなんて───。
ラン「……あの……」
ラン「……来てくれて、ありがと……う……」
アベル「……っ」
ラン「そして……迷惑かけて……ごめんなさい……」
ラスティン「いやいやそんなこと全く気にしてないし、謝るとこじゃないし」
ラン「……私……」
ラン「……みんなと戻っても大丈夫かな……っ」
ユリアナ「……馬鹿!!」
強く腕を引かれ、転びそうになる。
それをラスティンがとめてくれて、すぐ横でアベルが溜息をついた。
パシュは何だかやけに楽しそうで、ニケもいつもの笑顔で私を見守っている。
ラン「ありがと……う……っ」
ユリアナがきつく私の手を掴んでいるせいで、涙が拭えない。
くすぐったいような、恥ずかしいような、でも何か叫びたいくらい嬉しい。
有難う。
私はもう何も言えなくて、心の中で繰り返した。
───有難う、みんな───。