ラン「……きゃ！？」
ヴィルヘルム「おい！？」
ラン「あいった……───」
ヴィルヘルム「……何やってんだよ」
ラン「……ごめんなさい」

見ると、ブーツの底に紅っぽい実がくっついている。

ラン「……誰かの籠から落ちたんだね」

私が苦笑して立ち上がろうとした時。

ヴィルヘルム「ほら」

ヴィルヘルムの手が差し出された。

ラン「あ、ありが……と……」

自分の不注意の気恥ずかしさだけではない、くすぐったい照れ臭さがあった。
そっとその手を掴み、起き上がると───。

ヴィルヘルム「……っえ」
ラン「！？」

想像よりずっと強く腕を引かれて、私は硬直してしまった。
見上げたすぐそこにはヴィルヘルムの顔があって、大きな手が腰に当たっている。

ヴィルヘルム「あ！わ、悪ぃ！わざとじゃない、わざとじゃ！」
ラン「う、うん……」
ヴィルヘルム「っつか、お前、軽過ぎだろ！だからだよ！」
ラン「！？」
ヴィルヘルム「助け起こそうとしたら全然軽くて、それで勢い余っただけなんだからな？」
ラン「わ、分かってる……」
ヴィルヘルム「いやー驚いた！お前こんな軽かったんだなー！」
ラン「そ、そんなことないから！」
ヴィルヘルム「こんな細っこい身体でよくあの魔剣握れてたな、お前」
ラン「……っ」
ヴィルヘルム「あーそれともあれかな、持ち主で重さ変わったりすんのかな」
ラン「そ……そうかもね……」
ヴィルヘルム「そんなんで鎧つけて動けんのか？」
ラン「……動けます！」
ヴィルヘルム「ははっ、そうか」

恥ずかしさで頬や首筋、爪の先まで熱くて心臓も物凄い速さで脈打っている。

ヴィルヘルム「悪ぃ悪ぃ、いやしかしほんっと驚いた」
ラン「…………」
ヴィルヘルム「まぁそんななりであの剣振ってたことは褒めてやるよ、偉い偉い」
ラン「…………」

馬鹿にしているわけではなさそうだった。
何故ならヴィルヘルムの眼差しが本当に楽しそうだったから。

ラン「……───ありがと」
私は小さく頭を下げた。