ティファレト「よし、ここでいいかな、時間もそろそろ」
ラン「!」

不意にティファレトが立ち止まった。

ラン「じ、時間……?」
ティファレト「そう時間。……ああ、ほら見て」
ラン「え……あ!」

紫紺の夜空に、星が流れた。
ここは木々の切れ間になっているから、夜空が広く見える。

ティファレト「見た?」
ラン「うん、見えた!流れ星!」
ティファレト「これからもっと沢山落ちてくるよ、見てて」
ラン「……もっと?」

ティファレトが私の背中を軽く押し、夜空を視線で促した。

ラン「……っ」

ほんの一瞬触れただけだった。
けれど昨日のコレットの言葉のせいかちょっとしたことでも意識してしまって、頬が熱くなる。

ティファレト「ほら、また一つ」
ラン「あ……っ!」
ティファレト「ああ、また一つ」
ラン「わ……───」

幾つもの流れ星が降り注ぐ。
銀色の光が暗闇にぽつんと灯ったかと思うと、物凄い勢いで落ちてくる。

一つ、二つ、三つと重なると、そこだけ星の雨が降るようでその美しさに目が離せない。

ラン「もしかして……これを見せたかったの?」
ティファレト「うん、そう」
ティファレト「僕は占星術もやるだろ?今夜こんなふうに沢山の星が降るのが分かってたから、君と一緒に見たくて」
ラン「……っ」
ティファレト「毎年見られるものじゃないんだよ、何年かに一度、星が多い巡りは何十年、 何百年に一度なんだ」
ラン「そうなんだ……」
ティファレト「君はあの月藍石をいたく気に入ったみたいだし、もしかしたらこういうのも好きかなって」
ティファレト「どうかな?気に入ってくれた?」
ラン「もちろん!」
ティファレト「なら良かった」

すぐ側で、ティファレトが優しく微笑んだ。

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