ラン「あれ……?」
ルナリアを摘むために裏庭に向かった私の耳に、聞き慣れない音が届く。
ラン「……笛?一体誰が吹いてるんだろう、今まで聞こえたことなかったのに」
気になってその場で耳を傾ける。
聴いていると、時々途切れたりして上手───
というわけではなさそうだ。
ラン(誰かが吹けるようになりたくて練習を始めたのかな)
ただ、不思議と気になる音だった。
少し忍び足で、私が音のする方に近付くと───。
ラン「……!?」
その姿に、私は咄嗟に声を上げそうになって慌てて口を押さえた。
ラン(ヴィルヘルム……!)
全く想像していなかったその人物に、私は呆然となったまま身動き出来ない。
ラン(びっくり……)
ラン(こんなの一言も……)
そう考えてから、私は自分がまだヴィルヘルムとそれほど多く言葉を交わしていないことに気付く。