ティファレト「手を出して」
ラン「手?こう?」
差し出されたティファレトの手に自分の手を重ねる。
すると───。
ラン「あ……っ」
ティファレト「この大きさだと、やっぱり灯りを消さないと分かりにくいな」
そう言ったティファレトがランプに向かって指を鳴らすと、ふっと灯りが消える。
ラン「これ……!」
ティファレト「うん、そう。君が気に入ったあの石で作ってみた」
ラン「こんなものも……出来るの?」
ティファレト「初めてやってみたけど我ながら力作だなと思う」
ラン「……!」
ティファレト「気に入ってくれた?」
ラン「もちろん気に入ったけど、でもこれ……」
ティファレト「プレゼントだよ、もちろん」
ラン「ど……どうして?」
ティファレト「理由を問われると困るな。君の躯を飾るものを贈りたかったとしか」
ラン「そんな……」
ティファレト「君の瞳は綺麗な蒼だけど、近くで見るとサファイアとはまた少し違う色なんだよね」
微笑んだティファレトが、私の瞳を覗き込むように少し顔を寄せた。
ティファレト「僕はこの瞳が好きだ」
ラン「……っ」
ティファレト「色で言えばこの月藍石が一番近い気がする。それに君もこの石が気に入ったみたいだし」
ラン「そ、そう……かな」
ティファレト「魔法で錬成した、ってだけでこの石自体に魔力があるわけではないけど」
ティファレト「君に似合うと思ったんだ、ただそれだけ」
ラン「す、すっごく嬉しい!有難う!でも……本当にいいの?」
ティファレト「喜んでくれるなら何より」
ラン「……喜ぶよ、もちろん」
ラン「こんなの初めてだし……私、ずっと大切にする!」
ティファレト「うん」
私は薄闇で青白く光るその石を眺めた。
ラン「……でもね、ティファレト」
ティファレト「どうかした?」
ラン「私も、ティファレトの瞳の色がとても好き」
ティファレト「瞳だけ?」
ラン「え!」
ティファレト「この僕の瞳だけなの?君が好きなのは」
ラン「そ、そういうふうにとらないで!ティファレトが先に……」
ティファレト「僕は君の全部が好きだよ」
ラン「……!」
本当に、驚かせられる。
目の前の魔法使いはこんな言葉を いつもさらりと口にする。