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- 紗乃
- 「ええっ、そこまでしてもらわなくても……! それに時間だって――」
- 与市
- 「いいから、じっとしてて。すぐ終わる」
- そのまま与市は、問答無用とばかりに何度も何度も櫛を髪に通していく。
普段の雑な態度とは違って、その手つきはとても優しかった。
- 紗乃
- (あ……これ、ちょっと気持ちいいかも……)
- 最初こそ引っかかりもあったけど、丁寧に梳いていく内に髪はさらさらになっていく。
与市はその様子を、真剣に眺めていた。
- 紗乃
- (よく考えると、男の人に髪を触られるのって初めてかも……)
- 紗乃
- (……どうしよう。なんだか、緊張してきちゃった)
- 紗乃
- (いやでも、与市は私のために髪を梳かしてくれているだけであって……!)