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ラウル・アコニット
「じゃあ行くよ!」
無邪気に笑って、アコニットさんが私の両手を掴む。 そして――。

いきなり、組技をかけられた。
ヒロイン
「いた! いたたたた!?」
ラウル・アコニット
「あ、ごめん。加減間違えちゃった。
つい本気に……」
私の悲鳴に、腕の力は弱まる。
でも無理な姿勢なのは確かで、私はその腕から逃げようともがいた。でも――。
ラウル・アコニット
「ほら、こうやって上からのしかかられると、動けないでしょ?
だからいざって時はこうすれば大抵オレが勝つんだ」
ヒロイン
「わ、わかりました……わかりましたから、早く離して……っ」
ラウル・アコニット
「駄目だよ~。君にも、この姿勢覚えて貰わなきゃ。
君もいきなり誰かに襲われる可能性あるでしょ?」
ヒロイン
「一般小市民にはなかなかそんな機会ないです!」
じたばたともがいていると、押さえつける腕が弱くなる。
でも、代わりに――。
ヒロイン
「ひゃっ……! ま、待ってそれくすぐったい!」
ラウル・アコニット
「あはは。君、結構くすぐったいの弱いんだ」
くすくすと笑う息が、首筋にかかる。
あまりのくすぐったさに鳥肌が立った。
ヒロイン
「もう、アコニットさん! いい加減に――」
無理やりアコニットさんの方を振り向いて、私は息を呑んだ。
あまりに顔の位置が近かったからだ。

吐く息が触れて、さすがの私も硬直してしまう。

彼の髪の毛が、私の頬をさらりと撫でた。
――それぐらい、近い距離。

超絶級に整った、ムービースターの顔立ちが至近距離にあった。
ヒロイン
(アコニットさん、背が高いから普段は気づかなかったけど……まつげ、長いんだ……)
ラウル・アコニット
「ん? どうした?」
笑って、アコニットさんが私を見る。

それから、わずかに小首をかしげて、アコニットさんは顔を近づけてきた。
ヒロイン
(ってこれ……キスしようとしてる!?)