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- ヒロイン
- (えっ! 社長!? きゃっ!)
- キャップとゴーグルを外した瞬間見知った顔が現れ、私は驚き過ぎてプールの中に落ちてしまった。
冷たい水が一気に身体を包み込む。
寒いとか、溺れるとか、身の危険を感じるよりも、多くの疑問が脳内を駆け巡ってしまった。
――隣のレーンで颯爽と泳いでいたプロの水泳選手のような人は、まさかの社長だった。
- ヒロイン
- (なんで社長が……!?)
- 見つからないようこっそり見ていると、社長は濡れた髪をかき上げ、顔についた水を手で払っていた。
プールサイドで休憩していた人たちもその絵になる存在感に気が付いたのか、目を向けている。
彼はそんな視線を気にもとめず、どうやらタイムを計測していたのか、腕時計を操作し、満足した表情をしていた。
- ヒロイン
- 「えーと……。
…………社長は、S氏じゃない……んだよね」
- 何度か否定されているし、この間気になって過去の雑誌を漁ったら、社長が奥さんについて語っている記事も見つけた。
だから、絶対に違う。
違うはずなんだけれど――。
- ヒロイン
- (こんな偶然、あるのかなぁ……
後でオーウェンさんにもう一度聞いてみようかな)
- S氏がよく利用するプールで、社長を見かけた。
しかもそもそも代理が、社長秘書のオーウェンさん。
……冷静になれば、疑いたくもなる。
- ヒロイン
- (でも、社長は愛妻家だし、私にも何度もそう言ってるし……。
……突っ込まないほうが、良いよね)
- きっと、社長によく似た双子の弟とかがいるんだろう。
そしてその人が、こっそり婚活しているのだ。
きっと。
でも、疑念はますます強くなる。
私は水に顔を半分だけつけながら、更衣室に戻る社長の背中を、しばらく眺めていたのだった。