- 遮那王
- 「平知盛! お前の剣技、私に見せてみろ!」
- 平 知盛
- 「ふふ、ならば御覧いただこう。この太刀筋がお気に召すといいのだが」
- 遮那王
- 「!?」
- 遮那王
- 「く……っ!」
- 平 知盛
- 「はっ!」
- 遮那王
- 「やぁ! ふっ!」
- 平 知盛
- 「いい動きだね。はぁっ!」
- 遮那王
- (──強い。少しの打ち合いで、これほど圧倒されるなんて……!)
- 平 知盛
- 「戯れはこのくらいで十分かな。一緒に来てくれるね?」
- 遮那王
- 「断る。その太刀筋で戯れとはよく言ったものだ」
- 平 知盛
- 「ふむ、期待には応えたつもりだけれど。言っただろう、私はそなたを迎えに来ただけだと」
- 遮那王
- 「迎えに来た? 捕えに来た、の間違いだろう」
- 遮那王
- 「でなければ、なぜ太刀を収めない。なぜ剣呑な気をいつまでも放つ?」
- 平 知盛
- 「──ああ、これは失礼。
だが、私にも戦を楽しむ感情があったようでね、どうにも血が騒ぐのを抑えられないようだ」 - 平 知盛
- 「一思いに終わらせてしまうのは惜しい……そう、そなた相手なら」
- 遮那王
- (なんだ、この男は。強いだけではない、この空気……!)
- 遮那王
- (このまま打ち合えば、負ける。せめて足止めできれば――)
- 遮那王
- 「やっ!」
- 平 知盛
- 「なかなかいい太刀筋だ。だが、空を切っては意味がないね」
- 遮那王
- 「はあっ! たああああっ!」
- 遮那王
- (紙一重でかわすか……やはり普通に戦っていては駄目だ)
- 遮那王
- (ならば……!)
- 遮那王
- 「やああっ!」
- 平 知盛
- 「避けられぬように退路を斬り上げるか。なるほど、悪い手ではないね。
おかげで太刀を合わせる羽目になった」 - 平 知盛
- 「だが、合わせてみてわかることもある。──楽しいね、遮那王。もう少し遊んでみようか」
- 遮那王
- 「断る!」
静かな一歩だった。
舞い散る花びらをとらえようとするような戯れに満ちた軽やかな足取り。
だが――
ぞわり、とした悪寒が立ち上ってきて、身震いを抑えた。
一撃は上から。
避けられるのはわかっている。
返す刀で下から斬り上げた。