仙波 ワタル
「大丈夫だよ……何も心配はいらない。怖がらないで」
決して強く握られているわけではないのに、手を、振りほどくことができない。
仙波さんの整った顔がとても近くて、思わず頬が熱くなった。
仙波 ワタル
「花はね、無理強いなんてしない……かぐわしい香りを放って、優しく、相手を招き入れるんだ」
仙波 ワタル
「そして相手から求めさせるんだよ……こうやってね」
手のひらに触れる柔らかな感触。
人の唇とはこれほどまでに優しいのかと思わされるほどに心地が良い。
まるで花の色香に惹きつけられたように、私は仙波さんの濡れた瞳から目が離せなくなる。
仙波 ワタル
「そんなに怯えないで。恥ずかしがってるのもウブで可愛いとは思うけど……」
仙波 ワタル
「アンタにはオレに溺れる気持ち良さを知ってほしいんだ。こうやって……」
仙波さんは私を見つめたまま、再び手のひらに軽いキスを落とした。
東地 棗
「せ、仙波さん、やめてください……!」
仙波 ワタル
「こんなことするの、アンタにだけだからね。どう? オレの魅力……伝わった? これでアンタを蕩けさせてあげたいよ」
東地 棗
(勘違いしちゃいけない、これは私の能力の副作用)
東地 棗
(仙波さんの本心じゃないんだから……!)