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- 岡崎 契
- 「はい、準備完了。おいで、市香ちゃん」
- 準備を終えた岡崎さんは座椅子に座り、ぽんぽんと自分の膝を叩いていた。
- 岡崎 契
- 「キミの席は、ここ」
- 星野市香
- 「……そこじゃなきゃダメですか?」
- 岡崎 契
- 「うん。ダメ。くっついてたほうが怖くないでしょ?」
- 星野市香
- 「それはそう、ですね。怖くな――」
- 星野市香
- 「――って、【すごく優しいホラー】じゃなかったんですか……!?」
- 岡崎 契
- 「大丈夫、大丈夫。だって前に一緒に見たときのキミ、すっごく可愛かったから」
- 星野市香
- 「答えになってません!」
- 安心させるためというより、むしろ私を逃がさないためのシートベルトなのでは……。
そんな錯覚を覚える私をよそに、映画が始まってしまった。
- 星野市香
- 「……さ、最初は大丈夫そう、ですね……」
- 星野市香
- 「……!」
- 岡崎 契
- 「怖くない怖くない。ただのカラスの鳴き声だから」
- 小刻みに震えながら眺める私の眼前で、場面はゆっくりと進んでいく。
時々驚くようなシーンはあるものの……。
思っていたよりずっと淡々とした物語に、頭が徐々に慣れ始めてきた。
- 星野市香
- (この体勢のおかげもあるかも……)
- 内容も控えめだけど、背中に岡崎さんの体温を感じて、恐怖は少し和らいでいる。
私が身体を震わせるたびに、ぎゅっと抱きしめてくれる腕が心地よくて。
- 岡崎 契
- 「どう? そんなに怖くないでしょ?」
- 星野市香
- 「は、はい。意外と普通に……見られますね……」
- 岡崎 契
- 「だから言ったじゃない。すごく優しいホラーだって」
- 岡崎 契
- 「……でもね。残念なことに、この映画にはひとつだけ難点があるんだ」