- 源 義経
- 「弁慶?」
- 武蔵坊 弁慶
- 「……行かないで、ください」
- 源 義経
- 「……っ」
- 武蔵坊 弁慶
- 「そのような……そのような、いじらしいことを言われれば、引き止めぬなど出来ません」
- 武蔵坊 弁慶
- 「拙者だってあなたと一緒にいたい。誰にも姫の傍にいてほしくありません。いえ――」
- 武蔵坊 弁慶
- 「あなたを見ないでほしい。触れないでほしい。あなたは、拙者の妻なのだから……!」
- 源 義経
- 「弁――んんっ!」
- 源 義経
- 「……はっ」
- 武蔵坊 弁慶
- 「姫……」
- 源 義経
- 「んっ……!」
振り返った私は軽く息を呑んだ。
暗闇の中でこちらを見つめる弁慶の目が、わずかな星明かりに煌めくのが見える。
その目から視線をそらせず、心臓が大きく打った。
掠れた声に背中から震えが這い登る。
軽く引っ張られただけなのに、簡単に私の体は弁慶に倒れ込んだ。
そのまま両腕で抱きとめられて、弁慶に褥へ押し付けられる。
私の唇を弁慶の唇が性急に塞ぐ。
驚いて体を揺らしても、びくともせず、逃れることができなかった。
息を吸うためにわずかに口を開けば、弁慶の舌が入り込んでくる。
甘く、時に強く唇を吸われ、求めるように互いの舌が絡んだ。
体が思わず跳ねると、背中に弁慶の手が滑り込む。
そのまま自身の体を押し付けるように私を強く抱きしめた。