- 遮那王
- 「……お前は知盛のために、わざわざここまで私を探しに来たと言っていたな?」
- 遮那王
- 「私が平泉にいることを、すぐにでも知盛に知らせるのか……?」
- 平 重衡
- 「兄上にぃ? そりゃもちろん! そのために俺は来たんだから。落ち着いたら即座に書簡を出すさ」
- 平 重衡
- 「遮那王を見つけたって言ったら、兄上、褒めてくれるだろうなぁ」
- 遮那王
- 「そうか……」
- 遮那王
- (私を捕えにここまでくるだろうか……)
- 平 重衡
- 「……ふうん、こうして見るとお前って綺麗な顔しているんだね。まるで女みたいだ」
- 遮那王
- 「!」
- 遮那王
- 「ふざけるな。私を侮辱するつもりか」
- 遮那王
- 「離せ……っ」
- 平 重衡
- 「嫌だね。はは、そう睨むなよ。綺麗な顔っていうのは誉め言葉だろ?」
- 平 重衡
- 「兄上はお前の見目が気に入ったのかな? 確かに、男なのがもったいないぐらいだ」
背筋に這い上がるものがあった。
私が平泉にいることを知ったら、知盛はどうするだろうか。
暗澹たる思いに俯いていると、ふいに垂れた後れ毛を横から掬われた。
距離を取ろうとした私の手を重衡が取る。
そして、その場に縫い付けるように床に押し付けた。
その力は強く、手を引き抜こうとしてもびくともしない。
押さえつけている手が開かれ、するりと指が絡まる。