- 平 教経
- 「へえ、器用なものだな」
- 源 義経
- 「腕輪だけじゃなく、他にも色々と教えてもらったぞ。綺麗だろう」
- 平 教経
- 「確かに綺麗だが、俺を飾りつけてどうする。こういうのは女のお前が着けてこそだ」
- 平 教経
- 「貸してみろ。片手では出来ないだろうから、俺がやってやる」
- 平 教経
- 「ん? ……んん? ……なんだ、どうなっている」
- 源 義経
- 「……ぷっ。ふふふっ、もういい教経。その気持ちだけで十分だ」
- 平 教経
- 「いいやよくない! ちょっと待ってろ、これしきのこと……!」
- 源 義経
- 「そんなに力んでもうまくいかないぞ。植物を扱うには意外とコツがいるんだ」
- 平 教経
- 「く……っ! 不甲斐ない。花の腕輪一つ作ってやれないとは」
- 源 義経
- 「そんなこと気にするな。お前の気持ちだけでも私は嬉しいよ」
- 平 教経
- 「すまん……だが、いつか作れるようになってみせるからな」
- 源 義経
- 「ああ、楽しみにしている」
- 平 教経
- 「代わりと言うわけではないが……こんなのは知っているか?」
教経は同じように花を摘み、私の腕に巻き付けようとしたが……。
刀は巧みに使いこなす教経の指先は、繊細な草花を扱うにはまるで向いていないらしい。
何度やっても花はしっかり留まらず、ぱらりと解けて落ちてしまう。
彼は辺りに生えている草の葉を一枚千切り、口元にあてた。