オトメイト『終遠のヴィルシュ -EpiC:lycoris-』
- セレス
- 「いたっ……!」
- アドルフ
- 「! ……どうした?」
- 驚いたアドルフが私の手元を
覗き込んだ時には、
指先から小さな血の塊が浮かんでいた。
- セレス
- 「ゆ、指先を刺しちゃったみたい。
でも大したことはないから――」
- 大丈夫、と言おうとして。
- その単語は、声にならず。
- アドルフ
- 「………………」
- アドルフの柔らかい唇が、
私の指先に触れた。
- セレス
- 「え……?」
- 唐突な行動に、頭が真っ白になる。
- セレス
- 「アド、ルフ……?」
- 何を。
- 指に。
- アドルフの――。
- セレス
- (くち、びるが)
- ――触れている。
- セレス
- 「…………ッ!」
- その事実を飲み込んで、
頬がカッと赤く染まった。
- けれど目の前の兄は、
顔色一つ変えずに……。
- アドルフ
- 「…………悪い。
お前がガキだった頃の癖で、つい」
- セレス
- 「た、確かにあの頃は、
裁縫に失敗して指に刺す度に、
メソメソ泣いていたけど……」