スノウ
「……カルミア?」
いつの間にか、カルミアがテーブルから離れ、
壁にかけられている地図を眺めていた。
ルナ
「カルミア、どうしたの?」
カルミアの様子がおかしいことに気が付き、
私とスノウは彼の側まで行って様子を窺う。
カルミア
「…………」
カルミアはぼうっと、黒の世界の地図を眺めて
いたかと思うと、地図を指さして呟いた。
カルミア
「雲が……」
ルナ
「雲?」
スノウが地図を眺めてから、
何かに気付いたという風に、小さく声をあげた。
スノウ
「ルナ、この黒の世界の地図ですが……、
雲がかかった部分が増えていませんか?」
ルナ
「あっ……確かにそうだわ!
以前は、こんなに雲の絵が多く
なかった気がする……」
スノウは再び、持っていた本を読み上げる。
スノウ
「『灰色の世界が、黒の世界を
飲み込んでいき、地図にもその影響が出た』……」
スノウ
「まさに今、この本に書かれている事と
同じ事が起きているわけです」
ルナ
「じゃあ、灰色の世界っていうのは?」
スノウ
「『(うろ) の世界』のことじゃないでしょうか」
ルナ
「虚の世界が、黒の世界を飲み込む……」
私は、地図に描かれた雲を見つめた。

この雲が広がって、いつか黒の世界全てを
覆い隠してしまったらと考えると、ぞっとする。

スノウも深刻な表情で、地図を見ながら言った。
スノウ
「あまり、のんびりしている時間はないのかも
しれませんね……」