- ルナ
- 「よし。……これでサラダも完成!」
- サラダにドレッシングをかけて
力を入れずにふんわりと混ぜるといちごがつやつやと輝く。
- ルナ
- 「次は……」
- もう一品何か……と考えてから、
再びいちごを手にした時。
ふいに背後から
シャンプーの香りがふわりと私を包む。
- ルナ
- (……シャンプーだけじゃない。
どこか甘い……スノウの……)
- スノウ
- 「……とても美味しそうですね」
- ルナ
- 「……っ!」
- ぼんやりと香りに酔いしれていると、
柔らかな髪を揺らし、
スノウが私の手元を覗き込んでいた。
彼は手を伸ばすと、
背後から私をそっと抱きしめる。
- ルナ
- 「……と、突然……真後ろにいないでよ!
びっくりするじゃない……」
- スノウ
- 「何度か声をかけましたよ。
でもあなたは、料理に夢中になっている
ようでしたから」
- ルナ
- (だからって、
背後から近づかなくても……)
- そう思うけれど、
彼はよくこうして家事をする私に
くっつきたがる。
抱き寄せされるとスノウの髪が
頬にあたり、くすぐったい。
私をじっと見つめていた彼は、
上気した頬を緩めて嬉しそうに言う。
- スノウ
- 「ふふ……。
ルナが料理をしている姿というのは、
いいものですね」
- ルナ
- 「……いいって?」
- スノウ
- 「可愛らしいということです。
つい、こうして抱きしめたくなります」
- ルナ
- 「……スノウ……」
- 触れ合っている背中が熱い。
彼の熱が伝わり、私の体温も上がっていく。
- ルナ
- (……どうか、聞こえないで)
- 彼の濡れた髪から雫がぽつりと私の肩に
落ちて染みを作る。その僅かな繋がりが
どうしようもなく胸を高鳴らせる。
幾度、彼に抱きしめられても。
幾夜、彼と肌を合わせても。
まだ足りないと思うほど、
私は彼の腕の中が好きなんだと思う。
- ルナ
- (スノウの手、優しい……)
- 私の頭を撫でながら、スノウが囁く。
- スノウ
- 「こういう姿を見ると、
あなたが私の妻になるのだと、実感します……」
- ルナ
- (妻……)
- スノウの口から、
『妻』という単語が出てくると、
妙にそわそわして落ち着かない。