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ルナ
「どうして、離れないのよ。噛みつかれたいわけ?」
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離れて欲しい。離れないで欲しい。
血が欲しい。血が欲しくない。
相反する想いにかき乱されていく。
苛立って睨みつけると、不意にジャックはふわりと微笑んだ。
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ジャック
「……あなたが、そう望まれるなら」
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まるで、春の日差しのようだった。
初めて見たジャックの柔らかい笑顔に、ぎりぎりで耐えていた理性が瓦解する。
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ルナ
(……バカ。なんでこんな時に笑うのよ……)
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もう、堪えられなかった。
吸い寄せられるように、ジャックにしがみつく。
そして――
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ジャック
「あ……」
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噛み付くと、濃厚な甘い香りが体に流れ込んできた。
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ルナ
「ん……」
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熱い。
甘い。
――美味しい。
飢餓感がすっと消えて体が楽になるのが分かった。