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ジェミル
「家族ごっこはもうウンザリなんだ。
いい加減、オレを弟扱いすんのやめろよ!」
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ジェミル
「オレは、アンタの弟じゃない。
アンタを、一人の女として見てる男だ――だからアンタの手を汚したくねぇんだよ!」
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シリーン
「っ……」
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間近で私を見つめるジェミル。
マスク越しだったが、彼の目をこんなに近くで見たのは、一体いつぶりだろう?
ずっと、弟だと思っていた。
壊れそうな彼を守ろうと決めていた。
大切な家族だと思って生きてきたのだ。
私の肩を掴む手がどれほど強くても、その目が私を女として見ていても、それでも私は、姉であることをやめられない。
家族だからなのかは分からない。
けれども私は彼を守りたいと思っているから、引くわけにはいかなかった。
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シリーン
「ジェミル、ごめんなさい。
それでも私は、嫌なの。貴方に人を殺させたくない。
私は、貴方の事を大切に思っているもの……」
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ジェミル
「――弟として?」
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シリーン
「ええ」
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ジェミル
「ッ……! クソッ、どうすれば、やめるんだよ!」
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ジェミル
「オレは、アンタに守られたくない。
アンタに、人を殺させたくない!
いい加減分かれよ!」
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怒りに燃えるジェミルにぐいと引き寄せられた。
そして――。
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シリーン
(――え?)
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唇に触れる、柔らかいもの。
始め私はただ、彼が私の言葉を封じる為に何かしたのだと思った。
しばらくして、唇で唇を封じられていると気づく。
――彼に、キスをされていると。
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ジェミル
「ん、は、ぁ……んんっ……」
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シリーン
「んんっ……!」
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彼の舌が、私の歯列をこじ開けて、驚く私の舌を捕まえる。
激しく舌を絡められて、涙で視界が滲む。
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シリーン
(な、んで……っ……)
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――キスをされてはいけないよ。
店主様の声が、頭の中で何度も響く。
それは、ジェミルも言われているはずなのに。
乞うような荒々しさでキスをされ、うまく考えられない。
腕を掴まれているせいで、身動きもとれない。
冷静に考えれば突き飛ばすことも出来たのに、この時の私はキスをされた衝撃と、弟だと思っていたジェミルに裏切られた動揺でいっぱいになっていた。