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  • ヴィンス・ルーガン 「離れろ。
     私を誰だか分かってやっているのか?」
  • シリーン (さすがはヴィンス殿下。
     もう少し、ひと押ししたほうが良さそう)
  • ヘナタトゥーの力を借りるのなら誰でも出来る。
    でも、私には店主様に子どもの頃から仕込まれた誘惑の術がある。
  • シリーン 「ヴィンス殿下、私は戦利品です。
     お好きにされて構いません」
  • 甘えるように、蠱惑的に、瞳を潤ませて小さく微笑む。

    一歩近づく。
    他人同士が会話をする距離から恋人同士の距離へ。
  • ヴィンス・ルーガン 「戦利品だと? 何を言って――」
  • ヴィンス・ルーガン 「っ……」
  • ヴィンス殿下の顔色が変わった。
    頬は紅潮し、その瞳はぎらぎらと欲望を滾らせる。

    瞳に残っていた理性がみるみるうちに遠ざかり、その眼差しが細くなる。
  • ヴィンス・ルーガン 「……っは、ぁ……。
     この私に……っ薬を、盛ったのか……?」
  • ヴィンス殿下が胸元を抑えて喘ぐ。
    ――あとひと押しだ。
  • シリーン 「いいえ。一国の王子様にそのような失礼なことは致しません」
  • シリーン 「ヴィンス殿下。
     ご自分の気持ちに素直になられてはいかがですか?」
  • そっと指先だけで腕に触れる。
    もっと触れて欲しいと、もどかしくなるように。
    それだけで、十分だった。