何か考えるようにゆっくりと歩み寄ってきた昌吾が、私のすぐ側に立つ。
- 久世ツグミ
- 「どうかしたの?」
- 鵜飼昌吾
- 「僕にも作らせろ」
- 久世ツグミ
- 「え!?」
- 鵜飼昌吾
- 「この僕が、あいつらよりも優れているということを証明してやる」
- 久世ツグミ
- 「い、いや別にそれは……」
- 鵜飼昌吾
- 「僕としても使用人のような真似はしたくない。
……だが、そろそろ優劣をはっきりさせるべきだと思う」
- 久世ツグミ
- 「りょ、料理に優劣は関係ないのでは?」
- 鵜飼昌吾
- 「ある!」
- 久世ツグミ
- (何かこだわりなのかな……?)
- 久世ツグミ
- 「でも、もしかして……包丁……」
- 鵜飼昌吾
- 「ああ、一度も握ったことはないな」
- 久世ツグミ
- 「ならやっぱり大人しく見ていてもらえませんか」
- 鵜飼昌吾
- 「ナイフのようなものだろう」
- 久世ツグミ
- 「鉛筆を削るのとはわけが違いますから」
- 鵜飼昌吾
- 「いいから貸せ」
- 久世ツグミ
- 「え、きゃ……危な……!」
昌吾は私から包丁をむしり取り、
馬鈴薯に思い切り振り下ろした。
- 久世ツグミ
- 「きゃ!?」
- 鵜飼昌吾
- 「なるほど、いい切れ味だ。これの皮を剥けばいいんだな?」
- 久世ツグミ
- 「そ、そうだけど、でも……」
- 鵜飼昌吾
- 「任せておけ。手先は器用な方なんだ」