ルル「はあ……」
すごく気持ちいいはずなのに、疲れてるせいなのか私の思考は、どんどん沈んでいってしまう。
ルル「勉強は難しいし……。あとたった半年しかないのに、こんな調子で大丈夫なのかな」
ルル「シンシアたちともできれば仲良くしたいと思うんだけど、何故か嫌われてしまってるし」
山積みの問題を意識したら、余計に落ち込んでしまって、私はその場にしゃがみこむ。
ルル「どうして私って、こうなのかなあ……?」
すっかり地面と仲良くなって、広がる芝生に語りかけていると、ふと頭上から声が降ってきた。
ビラール「どうしまシタ? どこか痛イ?」
ルル「えっ…………」
ハッと振り返ったのと同時に大きくて温かい誰かの手が、頭にポンと置かれて――。
ビラール「こんなところにしゃがみ込んで、どうかしたのですカ?」
独特のイントネーションと、生まれつきらしい褐色の肌。
どう見ても異国の人だけれど、どうしてこんな場所に……?
ビラール「もしかして転びまシタか?それともお腹が痛いですカ?」
とてもやさしい声音に釣られて、なんとなく素直に答えてしまう。
ルル「ううん。どこも痛くないわ。ただちょっと、落ち込んでたの」
ビラール「……どうして?」
ルル「頑張ってるつもりなんだけど、上手く行かないことばかりなの」
ルル「だから……、私って本当にまだまだだなあと思って」
ビラール「ああ、そんなことデスか」
ルル「えっ?」
ビラール「大丈夫、大丈夫。何も心配いらないデス」
ルル「……どうして?」
ルル「だって、あなたは私の悩みごとが、どんなことかも知らないでしょ?」
ビラール「イエ。アナタはできないことが、たくさんあって悩んでいるのデスね?」
ルル「う、うん……」
ビラール「それなら大丈夫デス。
これからできるようになる可能性も、同じだけたくさんあるのデスから」
ビラール「それはとても素敵なコト。落ち込むなんてもったいナイ」
ルル「素敵な、こと……?」
ビラール「ハイ。何から始めてもイイ。
好きなモノから順番に頑張って、少しずつ前に進めばイイのデス」
ビラール「さあ、想像してみてくだサイ。……ほら、未来が楽しみになりませんカ?」
彼はにこにこと微笑んだまま、私の髪をやさしく撫でると、その手を離した。
ルル「…………」
できないことは、悲しいことじゃない。
これからできるようになることがいっぱいあるってこと――。
すごく素敵な言葉をもらえた気がして、私は見知らぬ異国の青年を見つめる。
ビラール「ん? まだ悲シイ?」
ルル「……ううん」
ルル「私、ルルっていうの。今の言葉、すごくうれしかった。本当にありがとう!」
ビラール「ああ。役に立ててよかったデス。ワタシの名前はビラールといいマス」
ルル「うーんと……。ビラールはどこの国の人?」
ビラール「【ファランバルド】から来まシタ。
砂漠にあるのでチョット暑いデスが、心の強い民が生きている国デス」
ルル「やっぱり留学生さんなのね!」
ビラール「ハイ。ミルス・クレアの生活、まだわからないコトも多いデスし、言葉も上手くないのデスが……」
私は……
ルル「私も転校してきたばかりだから、この学校のことはよくわからないの」
ルル「だからビラール、私たちってお揃いね!」
ビラール「お揃いデスか。うれしいデス」
ルル「ふふっ、よかった!」
事情はもちろん違うだろうけど、最近ミルス・クレアに来た生徒が、私以外にいて少しうれしいかも!
ビラール「この国のコト、魔法のコト、ワタシもまだまだ勉強不足デス」
ビラール「デスから、ルル。これから一緒に頑張りまショウ」
ルル「もちろんっ!」