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不意に伸びてきた手に抱き寄せられ、温かな胸に顔を埋める体勢になる。

鉤翅

「落ち着いて。大丈夫……大丈夫だから。」

紅百合

「………。」

優しく言い聞かせるように『大丈夫』を繰り返す。
その最中も背中に置かれた手は上下に往復し、幼子をあやすように撫で擦る。

鉤翅

「無理することないんだよ。
もし思い出したくないなら……なにも思い出さなくていい。
つらいと感じるなら、思い出す必要なんてないから……。」

紅百合

「鉤翅……さん……？」