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「よーし、全員座ってるな! というわけで……今回もやります発売記念企画!」


「義経様への愛は誰にも負けない。ならばここで叫んでいただきましょう」


「題して……『今日は皆で語り合おう! 好きなところ告白大会』~~!!」


「わ~~い! パチパチ~~~!!」


「なにやら賑やかだな。総当たり戦でもやるのか?」


「おそらく違うぞ」


「この光景……以前も見たな」


「ふふ、懐かしいね」


「なーんか面倒くさそう」


「嫌な予感しかしない……」


「言っておくが文句は聞かないぜ。今回は人数が多いからパパッと始めるぞ!」


「は? 前も同じ人数だっただろう」


「それが少し違うんだなぁ。今回はそう、攻略対象が増えたんだ!」


「こうりゃくたいしょう……とは?」


「義経様と恋仲になれる者のことだ」


「恋仲!? なんと……!」


「それは面白くないね」


「……」


「お、おい。横からの圧がすごいんだが」


「俺に言わないでよ」


「なるほど。前回発売されたゲームでは五人だけが恋仲になれたが、忠信殿たちにまで広がったと」


「うん。俺と忠信、継信、重衡の四人が追加要員で、前回の春玄たちみたいに戦いの中で仲が深まっていくんだよ」


「頼朝様、知盛、教経、弁慶、春玄たちは恋仲になった後の話が展開されるそうだ」


「そう、だから今回は前回よりも甘さが大幅ア~~ップ!! というわけで、ここからは全員で義経様のことを語り合って発売を盛り上げていこうぜ」


「断る」


「あれ、教経なんか照れてる? あそっか、この教経は義経と結ばれた後の教経なのか」


「ああ。恋仲スタートの五人は、それぞれの恋愛エンド後から連れてきた」


「普通ならあり得ない状況だな」


「そこは深く考えないことだよ~」


「へえ、そう考えると面白いな。前はあんなに対決しろって吠えてたのに」


「う、うるさい!」


「むむっ、五人が恋仲の状態と言ったな。では頼朝殿も義経様のことを……?」


「そうだな。愛しい妻として大切に想っている」


「!?」


「引かないであげて春玄。俺も普段と違いすぎて驚いたけど」


「え? いや、引いたというか……貴重な姿だな」


「私は帰るよ。男どもと語り合うより姫に会いたいからね」


「わあああ、さっそく好き勝手なこと言い始めてる! 兄者、早く始めよう!」


「では、頼朝様からいいでしょうか?」


「私か?」


「ええ。先ほどのように愛を語る姿はおもしろ……とても感銘を受けたので、もっとお聞きしたく」


「言い直したな」


「……私に寄り添い、光を照らしてくれたのは他ならぬ義経だ。故に感謝の気持ちも大きい」


「あいつは常に私を気にかけ、言葉を投げかけてくれる。その優しさが好ましい。しかし自分の気持ちを押し殺すところもあるからな、そこは気にしてやらねばと思っている」


「おお……あの頼朝殿が饒舌に!」


「頼朝様は、やればできる子だよ!」


「お前、あいつの母親か何か?」


「あの者の笑顔に癒され愛されていると実感しているからこそ、憂い事は私が取り除いてやりたいと思っている」


「この想いは他の誰よりも強いだろう。己の話ばかり押し付けて言い寄るような男とは違う」


「ほう?」


「おおーっと、これはまさかのマウントか!?」


「確実に知盛を煽りに来ているな」


「なるほどね。言うじゃないか」


「待て、知盛。顔が怖いぞ」


「やり合うなら手伝うよ、兄上」


「それには及ばないさ、重衡。ここは、私の姫への愛の方が大きいと示すだけだからね」


「ならば聞かせてもらおう」


「ああ、いいとも。私の愛する姫は優しく可憐で愛らしい。立ち振る舞いも蝶のように優雅で人々を魅了しているが、やはり心根の美しさが一番の魅力だと思うよ」


「夫としては、その優しさが周りに向けられてばかりで面白くないが、そんな彼女だからこそ私だけを見つめてくれるひと時は何よりも幸福な時間だ」


「共寝の時の彼女は頬を染めつつ子猫のように身を委ねてきてね。恥じらっているのに、こちらを見つめる顔は期待に満ちている。熱のこもった瞳は逸らされることなく……」


「ちょ、待て待て待て~~!! これ以上は駄目な気がする!」


「もういいのかい? まぁ、私だけが知る姫の姿をこれ以上話してやる必要もないか」


「……」


「教経は固まってるね。大丈夫?」


「なんというか、聞いていて眩暈が……」


「教経には刺激が強かったかな」


「うるさい。お前は時と場所を考えろ!」


「だが、以前の執着心溢れる姿とは少し雰囲気が変わったな」


「うむ。違和感があるというか……」


「ふふっ、どう思われようと気にしないよ。彼女が私を変えてくれたのは事実だしね」


「……」


「頼朝様、そこまで睨まずとも……」


「今更だけど、意外と嫉妬深いよね。頼朝様」


「それより次は教経に話してもらいたいね」


「な!?」


「色恋にまったく縁のなかった従兄弟が、彼女をどう思っているのか……相手が義経という点は気に入らないが、興味はある」


「あ、それは詳しく聞きたいなぁ」


「っ、そもそも人前で話すつもりは……」


「問答無用! 話すまで帰れないぞ」


「ここで逃げるのは男らしくないのでは?」


「ぐ……」


「言ってみろ、教経」


「頼朝殿の圧がすごい」


「聞きたくないけど気になる~ってヤツだよ」


「……別に特別なことは何もない。ただ、戦を通して奴の強さと優しさに惹かれた。そしてあいつも俺のことを好いてくれて、共に生きると言ってくれた。それだけだ」


「今は二人で慎ましく生活を始めているが、前向きな姿勢にはいつも助けられている。悩みもあるだろうに、負けじと己を奮い立たせて笑顔を見せる義経は……美しいと思う」


「うわ……教経からこんな言葉を聞くなんて」


「ふん、頑なになるより素直になった方が良いと気づいただけだ。相手と向き合う大切さも、あいつに教わった。俺たちは互いを尊敬している。だからこれからも上手くやっていけるだろう」


「うむ。今の教経の話は、わかる気がするな」


「なに?」


「拙者も義経様のことを尊敬しておる。それは夫婦になった今でも変わらぬ。あのお方は、とても素晴らしい心を持っているからな」


「敵ながら、そこを理解してくれているとは何とも嬉しいではないか! 立場さえ違えば、義経様を慕う者同士で幾晩も語り合えたかもしれぬ」


「あ、ああ……」


「教経が押されているな」


「純粋に同意されて戸惑っているんだろう」


「しかし、義経様を想う気持ちは拙者も負けてはおらぬ。次は拙者が語っても良いだろうか?」


「もちろん! 俺も聞きたいな」


「大したことは出来ぬが、あのお方と過ごすといつも心が安らぐ。明るく拙者の心を照らして導いてくれる……主従を結んでいた時はそう感じていた」


「だが、今はそれだけではない。拙者があのお方を引っ張ってさしあげたい、様々なところへ連れ出して喜ばせたいと強く思うようになった」


「先日そう告げると姫も同じことを考えていたようでな。私もだと笑ってくれたのだ。あれは嬉しかったというか……愛らしい笑みに内心見惚れてしまった」


「弁慶の話はいつ聞いてもほっこりするな」


「色気がないの間違いじゃない?」


「恋仲といっても、共に過ごす空気感は人によるだろう」


「それで言うと春玄は義経様と幼馴染だし、友達っぽい感じが抜けなかったりするの?」


「俺? そうだな……端から見れば以前とあまり変わらないかもしれない」


「おやおや、そこは男を見せるべきでは?」


「わかってるさ。俺だって一人の男として、あいつを一番幸せにできるのは自分だと思っている」


「ふむ」


「最初はいつも一緒にいて、隣で支えてやろうとしていただけだった。それが恋心に変わって、あいつの弱さ含めて全部包み込んでやりたいと思った」


「何を考えているのかわかるからこそ、その思いを尊重して一緒に生きていきたい。大きな目標はまだないけれど、戦を終えてからはゆっくり過ごすことを優先しているよ」


「……と言いつつ、今はあいつを甘やかすのが楽しくて仕方ないんだ。肩に触れるなんて普通だったのに、妙に照れたりするから可愛くて。歯止めが利かなくなりそうで、そこだけ少し困っているな」


「……おい、これのどこが友達っぽいんだ」


「予想よりも甘いやり取りだったな……」


「そうか? 惚れた弱みというか、今まで以上に振り回されてる気はするが」


「うわ、誰かに振り回されるなんて恰好悪い。俺なら御免だね」


「へぇ~」


「ほう……」


「おい、なんだよその顔は。言いたいことがあるなら言えよ」


「いや……重衡も結局は義経様に振り回されるんじゃないかと思って」


「は!?」


「あ、そっか。今回は重衡も攻略対象だもんね。義経様と仲良くなったら、甘くなっちゃうことも……」


「あるわけないだろ、そんなの。振り回すなら俺の方に決まってる!」


「馬鹿真面目で鍛錬ばかりしている奴だぞ? まぁ、見た目は悪くないし、からかい甲斐のあるところは気に入ってるけど」


「いちいち反応するのが面白いんだよね。それで懲りたかと思えば、お節介を焼いてきたり……見ていて飽きないとは思うかな」


「……」


「頼朝様、また眉間に皺が寄ってるよー」


「大方、私たち兄弟は性格が悪いとでも思っているのでは?」


「わかっているのなら直せ」


「何故そなたに言われて直さなければならないのかな?」


「そうそう。義経だって意外と苛められるのが好きなのかもしれないし」


「え!? そうなのか!?」


「おい、何故そこで食いつく」


「忠信、何か良からぬことでも考えているのか?」


「いやいや! 俺はただ、そんな姿を見たことないから意外って意味で!」


「というと?」


「俺の知ってる義経様は、明るくて真面目で虐げられている人を率先して助ける人だ」


「あんなに分け隔てなく人を思いやることができるなんて、本当にすごいと思った。俺が一番尊敬しているところはそこだな」


「うむ、その気持ちは拙者もわかるぞ」


「だろ? あと、義経様は可愛らしいからな! やっぱり傍にいるとついつい見惚れて……」


「見惚れて、だと?」


「そなたは邪な目で彼女を見ているのかな?」


「よし、お前はしばらく義経様と話すな」


「ひどい! 誰か助けてくれ!」


「義経様ガチ勢ばっかりだから仕方ないよ」


「ガチ過ぎないか!?」


「がちぜい……はよくわからぬが、義経様は多くの者に好かれているな」


「ああ。私も義経様の人を惹きつける様を何度も見てきた。ご本人は否定するが、人をまとめ上げる力も持っておられるし……」


「戦では先陣切って戦いながら、私たちも頼りにしてくれるところなど従者冥利に尽きる。あのお方の信頼にはいつでも応えたくなるな」


「あー、たしかにね。あの人の場合は愛され体質っていうのかな」


「愛され体質?」


「うん。頼朝様の弟ってことで最初は興味があったけど、俺もだんだん義経様本人のことが大好きになっちゃったもん。あれは本人の魅力あってこそでしょ?」


「とにかく素直って言葉が似合う人だよね。こっちの言葉にまっすぐ向き合って、応えてくれる。だから手を貸したくなるし、もっと話したいって思うんだろうなって」


「ああいう素直なところ、頼朝様も見習ってくれたらいいのに」


「私が?」


「素直な頼朝殿……」


「うわ、それ気持ち悪くない?」


「そうはっきりと言うものではないよ」


「……もう良いだろう。これ以上話すことはない」


「そ、そうですね! このままだと血を見そうだ」


「む、もう終わりか。義経様について、もっと語らっても良かったのだが」


「いいじゃないか。あいつへの想いは直接話してやろう」


「そうだね。早く帰って姫に話せば、喜んでくれそうだ」


「やれやれ……妙に疲れたな」


「教経、なんかちょっと老けたんじゃない?」


「誰のせいだと思ってる!」


「それじゃあ、この辺でお開き! 皆さん、俺たちの活躍を是非楽しんでくださいね~!」


「仲間と共に戦うも良し、恋人と甘い蜜月を過ごすも良し。好きなところから遊んでくれ」


「我ら一同、心よりお待ちしています」