20XX年、4月。高校3年生になったばかりの星野香月は、ある日、
クラスメイトが休み時間に譜面を見ていることを知り、学校帰りに声をかけた。
「お前さ、楽器やってたりすんの? それとも歌?」
クラスメイトの名は、瀬良あきと。
瀬良の趣味が作曲だと知った香月は、自分もギターをやっていることを打ち明ける。
音楽を通じて親友と呼べる仲になった2人は、毎日のように音楽について語り合った。
そしてX-Day事件が起こり始めた5月。
瀬良の紹介で一色康弘と出会った香月は、一色が歌に賭ける覚悟を目の当たりにして、
あやふやだった自分の夢が確かなものに変わっていくのを感じていた。
――瀬良も同じ想いでいると、信じて疑わなかった。
しかし、X-Dayのカウントダウンが進んでいくと同時に、彼らの心も少しずつ綻んでいく。
姉との確執に苛立つ香月、罪の意識に苛まれる瀬良。
彼らが描いた夢は、いつしか交わることのない道を進んでいく。
――同じ夢を見た彼らの、出会いと、絆と、別れの物語。
年末のアドニス制圧作戦が成功し、多数の構成員が逮捕されたことにより、X-Day事件が収束に向かった2月。
警視庁・捜査一課の管理官であり、X-Day事件捜査本部で指揮を執っていた峰岸誠司は、
上司の森丘から【捜査本部解散】の話を聞かされる。
警察の威信を地に落とすこととなったX-Day事件。
それは被害者のみならず捜査に奔走した警察官たちにも傷痕を残す結果となった。
管理官として本部の中心にいた峰岸も、他人には見せない苦悩と後悔を抱えていた。
組織の一員としての責任、自身の能力不足への悔恨。
答えのない問いを抱きながら日々起こる事件に対応していた峰岸は、あるきっかけから星野市香と交流を図ることになる。
【X-Day事件を解決に導く鍵となった新人警察官】である彼女と、複雑な心境を隠して接する峰岸。
「星野さん。あなたは……あなた自身が思うよりもずっと、価値のある存在だと私は思いますよ」
警察官としての矜持と戦う彼が、導きだした答えは――。
独自でX-Day事件を追う元警察の集団――通称“探偵事務所”。
柳愛時を筆頭とした彼らの監視と警護を命じられたSPの吉成秀明は、
先輩の岡崎契と共に日夜事務所を張っていた。
彼らが警戒していたのは、X-Day事件に関与している可能性の高い現職警察官・星野市香の存在。
なぜ彼女が柳愛時たちと接触しているのか探りを入れていた、ある夜。
吉成はひょんなことから星野市香の弟・星野香月と交流を深めることになる。
姉弟の確執を知ってしまった彼は、自身の過去と重ねて香月を気にかけずにいられなかった。
「香月君のことを大切に想ってる気持ち、あなたが否定しちゃダメだ」
SPの信念は『いざというとき、迷わないこと』。
仕事を完遂するためには深入りするべきでないと思いながらも、
吉成は少しずつ彼女との心の距離を縮めていく。