- 久世ツグミ
- 「いらっしゃいませ! 可愛い金魚は如何ですか?」
金魚達は既に神社に運び込んだ後だったようで、
おじさんと交代して私達は店番を始めた。
- 客
- 「あら、可愛い金魚屋さんね。一回やらせてもらっていい?」
- 久世ツグミ
- 「はい、もちろんです!」
- 客
- 「ほう、元気が良さそうだな」
- 客
- 「ねぇあなた、飼ってみてもいい?」
- 客
- 「おまえの好きにするがいい」
- 久世ツグミ
- (……仲の良さそうなご夫婦)
私の両親よりも、少し上だろうか。
母のこともあり、二人で仲睦まじく何処かに出掛けていく姿───というのが余り記憶にない。
- 客
- 「金魚すくいなんて久し振りだから緊張してしまうわ」
- 汀紫鶴
- 「斜めに入れると意外に破けにくいんですよ。
それと出来るだけ水面近くですくうのがコツです」
- 客
- 「まぁいいことを聞いたわ、頑張らなきゃ」
- 客
- 「どの子がいいかしら、みんな元気が良くて迷うわねぇ」
- 客
- 「そっちのほら、背中が白いのはどうだ、愛嬌のある顔をしているじゃないか」
- 客
- 「そうね、でもすくえなくては話にならないわね」
顔を寄せ合うようにして覗き込むその姿が
微笑ましい。
- 久世ツグミ
- (私も、こんなふうに紫鶴さんとずっと一緒にいられたら……)
- 久世ツグミ
- 「!?」
思わず浮かんだ自分の考えに、耳まで熱くなる。
- 久世ツグミ
- (な、何を考えているの、私……)