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発売まであと7日

リアン
「――いらっしゃい、素敵なお客さん。イケメン店主と美味しいお酒が飲める、 癒しのお店・チアーズへようこそー!」

リアン
「さ、まずはお近づきの印ってことで、ドリンクを一杯サービスと行こっか。お酒は飲めるかな? ノンアルにする?」

リアン
「あ、そうそう。そういえば……。お客さんは【CIRCUS】って知ってるかな」

リアン
「今、王都中で話題になってる、国公認のパフォーマンス集団でね。この間、最終公演があったんだけど――」

ラディ
「――よ。邪魔するぜリアン」

リアン
「あ、ラディ。ちょうどいいとこに! このお客さんにCIRCUSのことを話してあげてくれない?」

ラディ
「あん? ……まあ、酒の一杯でもサービスしてくれるなら構わねえけど」

ラディ
「それじゃせっかくだから語ってやるか。心を閉ざした王子様を救うため旅に出た、俺たちCIRCUSの紡ぐ光輝く物語を――」

発売まであと6日

ジーニア
「んん~!! やっぱり王都に帰ってくると落ち着くわね。最新のスイーツ! ファッション! コスメ! まさに文明の香りがするわ!」

イーオン
「旅をしている間は、何かと落ち着かなかったからな」

イーオン
「……しかし、ジーニア。言葉の割には、浮かない顔をしているように見えるが」

ジーニア
「……あら、やっぱりわかっちゃう? さすがイーオン。旅で苦労を分かち合った仲ね!」

イーオン
「分かち合ったというよりは、9:1で苦労を押し付けられた気が……」

ジーニア
「現状に不満があるわけじゃないんだけどね。ただ、旅の途中はトラブルに次ぐトラブルで息つく暇もなかったじゃない?」

イーオン
「ああ……都市ごとの問題に立ち向かったりと、色々な意味で刺激的な日々だった」

ジーニア
「だからか、王都に戻ってきてもこう、 退屈っていうか物足りない感じなのよ」

ジーニア
「はあ……心がわくわくするような話、またどっかに落っこちてないかしらね」

発売まであと5日

ラディ
「あー……うー……あー……」

ザフォラ
「おい毛玉。突っ伏してうめきたいなら、テーブルの上じゃなく床で突っ伏してろ。そうすれば毛足の長いモップとして、多少は店の役に立てるぞ」

ラディ
「誰がモップだ! ……つーかザフォラ! お前はうめいてる仲間にもっと優しい言葉かけられねえのかよ!?」

ザフォラ
「二日酔いの毛玉に優しい言葉をかける義理はない」

ザフォラ
「……それに今はもう仲間じゃない。【元】仲間だろ」

ラディ
「旅が終わってCIRCUSも解散したからもう仲間なんかじゃねえって? ほんとはそんなこと思ってないくせに――」

ザフォラ
「……………………」

ラディ
「ぎゃあああああ! 図星突かれたからって捻り上げんな! 俺の体はそっちに曲がるようにできてねえ!」

ザフォラ
「ふん……馬鹿なこと言うからだ」

ザフォラ
「仲間だのなんだの連呼して……。別れの傷を深くする必要なんてどこにもないだろ」

発売まであと4日

ヴィリオ
「なあなあなあなあ!! 聞いたかイーオン聞いたか!?」

イーオン
「……そ、そんなに慌てて、いったいどうしたんだ、ヴィリオ」

イーオン
「CIRCUSも解散したし、一旦ドラゴンの島に戻ると聞いたが……。その日程でも決まったのか?」

ヴィリオ
「違う違う! むしろその逆だって!」

イーオン
「……逆……?」

ヴィリオ
「おう! こうしちゃいられねえ! みんながまだこの街にいるうちに、さっさと声をかけて集めねえと! 手伝ってくれ、イーオン!!」

イーオン
「いや……。いったい自分は何を手伝えばいいんだ? 話が見えて来ないのだが……」

ヴィリオ
「あ、悪い悪い。つい興奮しちまって。実はさ、さっき決まったんだよ――」

ヴィリオ
「オレたちCIRCUSの! ――アンコール公演が!!」

発売まであと3日

パスハリア
「CIRCUSの、再公演……?」

ジーニア
「そうそう。ワタシもついさっき、コリヴス王子から知らされてびっくりしてるんだけどね」

ジーニア
「ほら、ワタシたちの最終公演って、物凄く評判よかったでしょ?」

パスハリア
「うん。みんなこれが最後だからって全力を尽くしたステージだったし」

パスハリア
「みんなが自分の全部を出し切った、最高のショーになったと思う」

ジーニア
「それで住民たちから次々ともう一度観たいって意見が殺到したのよ」

ジーニア
「で、心を取り戻したコリヴス王子も、それを強く後押ししてくれて、実現に至ったってわけ」

ジーニア
「それで今、改めてCIRCUSメンバーに声をかけてるんだけど」

パスハリア
「……………………」

ジーニア
「でもパスハリア、アナタは……」

パスハリア
「ふふっ、みなまで言わないで? ボクもこのままみんなとお別れは寂しいと思ってたんだから」

パスハリア
「ほんの一度きりの再公演でも、またみんなと一緒にいられる時間は大切にしたい。……仲間ハズレは嫌だからね?」

発売まであと2日

ザフォラ
「――馬鹿じゃないのか?」

パスハリア
「うん? どうしたのザフォラ? 鏡ならこっちにあるよ?」

ザフォラ
「笑顔で遠回しに人をディスるな。……俺単体でもお前単体の話でもない。CIRCUS再公演のことだ」

ザフォラ
「そもそもなんだこのチラシの公演日程。二日後に公演とか何考えてんだよ」

パスハリア
「あー……みんなの予定を考えると、そこしかなかったって言ってたよ」

パスハリア
「合わせで練習する時間もないし、ぶっつけ本番になっちゃうけど」

パスハリア
「伝えてくれたヴィリオいわく、【オレたちの絆があればなんとかなる!】だって」

ザフォラ
「あの根性論トカゲめ……。バカだバカだとは思ってたが……」

パスハリア
「ザフォラ、どこに行くの?」

ザフォラ
「決まってるだろ、稽古だ。バカトカゲの発言なんて信じたら、失敗に次ぐ失敗は間違いない」

パスハリア
「ふふっ。まったく素直じゃないね。待ってよザフォラ、練習ならボクも付き合うから!」

発売まであと1日

リアン
「まさかあの興奮をもう一度味わえる日が来るとはね!」

リアン
「うちのお客さんたちもCIRCUS再公演の話題で持ち切り! 街中が大騒ぎになってるよ!」

ヴィリオ
「そっか……へへっ。なんかそう言われると、やる気が湧いてくるな!」

リアン
「でも実際、大丈夫なの? CIRCUSのプロデューサーってことで、あの子、突然公演台本を任されてめちゃくちゃ慌ててたよね?」

ヴィリオ
「んー……。正直、準備期間がないのはきついな。けどそれは公演をしない理由にはならねえだろ?」

ヴィリオ
「……だってみんなは、オレたちの公演を望んでるんだ。だったらそれに応えないと。――それがオレたちCIRCUSだからさ!」

発売当日

ジーニア
「――さーてさてさて! よく集まってくれたわねCIRCUS諸君! みんな、準備はいいかしら!?」

パスハリア
「ふふっ、もちろん。無茶な日程だと思ってたのに、まさか全員揃うなんてびっくりだね」

ザフォラ
「無茶どころか完全に準備不足だ。おい、そこの自称CIRCUSプロデューサー。なんだこのリアンが届けに来た公演台本は」

リアン
「【自由に! 思うままに! みんなに笑顔を届けようね!】」

ザフォラ
「……これのどこが台本だ? 言い訳があるなら言ってみろ」

ラディ
「あんまうちの娘いじめんなよザフォラ。これでも一生懸命考えたんだぜ?」

イーオン
「その結果、各自の判断に任せたわけか。……まあ実際、今細かい台本を渡されても覚えている時間はないからな」

パスハリア
「いいんじゃない? この筋書きのない台本、ある意味ボクたちらしいよ」

ジーニア
「フフっ、そうね。ここまで来たら、もう覚悟を決めましょ」

ヴィリオ
「さあ、オレたちCIRCUS――アンコール公演の始まりだ!」