- 宏太
- 「わ、悪い。怪我して……っ」
背中越しにわたしを見て、
板前さんが急に黙り込む。
- 宏太
- 「女を巻き添えにしたばかりか、つぶしかけるなんて……」
- 宏太
- 「殺されてもおかしくない……!」
- ゆのは
- 「え? いや、そんな、
今のはわざとじゃないですし……」
- 宏太
- 「怒って……ないのか?
文句を言われる覚悟なら、出来てるぞ」
- ゆのは
- (この人……、何でこんなに怯えてるんだろう)
- ゆのは
- (わたし、そんなに怖く見えるのかな……)
- ゆのは
- 「お互い怪我してないみたいで、良かったですね」
- ゆのは
- 「板前さんなら、手を怪我したら一大事ですし」
- 宏太
- 「あ……ああ。お前……優しいんだな」
- ゆのは
- 「これくらい普通で……ああっ!」
- 宏太
- 「!? や、やっぱり怒ってたのか?
優しさはフェイントだったのか!?」