何も言えずに唇を震わせていると、
桐阪先輩の大きな手が、私の頭を撫でてきた。
- 橘川冴子
- 「あ……」
- 桐阪保
- 「君が檜渡君を庇っても、俺は彼が悪いって言うよ。
君がこれ以上、罪悪感で押しつぶされないように」
- 橘川冴子
- 「う……桐阪……先輩……」
桐阪先輩の優しい言葉が、更に涙を溢れさせる。
- 桐阪保
- 「女の子を泣かせちゃうなんて、
俺も男として情けないね」
- 橘川冴子
- 「桐阪先輩は……悪くないです。
私を……励まそうとして、くれてるんですよね」
- 桐阪保
- 「……君は良い子だね。
慰めるのに失敗したやつにも、気遣いができる」