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刀を持ったまま、伍代は私へと歩み寄る。
切っ先が向けられるのは当然、左手の甲。
- 零崎紘可
- 「…………」
- 零崎紘可
- (駄目、斬られる……!)
- 伍代朋江
- 「これで終わりだ!!」
- 零崎紘可
- 「っ!!」
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ぎゅっと目を瞑り、私は覚悟を決めた。
しかし、振り下ろされたはずの伍代の刀は私の左手に到達することなく、
ただキーンという甲高い音を周囲に響かせただけだった。
恐る恐る開いた私の目に映ったのは、一人の少年の背中。
- 伍代朋江
- 「て、てめぇ……」
- 弐藤光
- 「ふー、危ない危ない。間一髪ってところですか」
- 零崎紘可
- (誰……?)
- 弐藤光
- 「それにしても伍代先輩。何も知らない女生徒を一方的に攻撃するなんて、
男として恥ずかしくないんですか?」
- 弐藤光
- 「不意打ちと一緒ですよ、こんな形で数乱戦を始めるのは」
- 伍代朋江
- 「ちっ、うるせぇこのガキ!」
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伍代は怒りをあらわにしながらも、後方へと下がり私たちから距離を取った。
- 弐藤光
- 「さてさて、もう大丈夫ですよ。王子様が助けに来ましたから!」
- 零崎紘可
- 「お、おうじ、さま……?」
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驚いて目を瞬かせていると、
助けてくれた少年は私に手を差し出しその場から立ち上がらせてくれた。
- 弐藤光
- 「はい! お姫様の危機に颯爽と現れ助ける!
これぞ王子様の鉄則ってやつですよね?」
- 弐藤光
- 「で、まさに今がその状況かと。すなわち俺は王子様ってことです」
- 零崎紘可
- (へ、変な人……)
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しかし、彼が私を助けてくれたのは事実。
もしあのまま伍代に斬られていたらと思うと、身震いがした。
- 零崎紘可
- 「助けてくれてありがとう」
- 弐藤光
- 「いえいえ、どういたしまして!」
- 伍代朋江
- 「おい、弐藤。こんなことしてただで済むと思うなよ」