賀茂 :……君たち、
今回の【玉依姫に関する一大事】によく集まってくれたな。
これも僕の人望ということか!!
さすが僕! さすがエリートの中のエリート!!
典薬寮幹部への道も容易いな!!

小太郎:うん、そうだな。お前の人望で集まったわけじゃねえな。

晶  :玉依姫に関する一大事っつーから、来てやったんだ。

賀茂 :な、何!?
それでは僕が困っていたら助けないとでも言うのか!?

克彦 :……例えばお前が、
絶壁に片手でぶら下がっているとしよう。
そしてそれを俺が見たとする。

賀茂 :はあ。

克彦 :お前が俺に助けを求めたとする。
俺はどうすると思う?

賀茂 :それは……助けるんじゃないですか、普通。

克彦 :甘いな。

賀茂 :む……じゃあ、突き落とすとかですか? ひとでなしっ!

克彦 :アホウが、お前相手にそんな労力使ってたまるか。

賀茂 :じゃあどうするんですか!!

克彦 :お前が力尽きて落ちるまでをじっと眺める。

賀茂 :叩き落すよりひどい!

克彦 :真翡翠のお笑い担当として、いいリアクションを期待してるぞ?

賀茂 :そんな状況でリアクション芸なんてできませんよ!!

陸  :お笑い担当ってとこは否定しないんだ……。

御子柴:『りあくしょん』とはなんだ? うまいのか?

亮司 :いや、食べ物じゃないかな……。

小太郎:つうか、賀茂の話なんてどうでもいいし。

賀茂 :な……なんだと……?

陸  :賛成。

亮司 :賛成だね。

賀茂 :く、くそう!! この扱いはなんだ!
みんな、僕の才能に嫉妬してるのか!?

御子柴:それはありえないだろう。
嫉妬する要素が見当たらない。

賀茂 :あなたまでですか!?

亮司 :まあ、みんな一律で賀茂くんに
興味がないという結論がでたところで……。

賀茂 :納得いきませんよ、その話題転換のやり方!

小太郎:まあまあ、もういいじゃん。
それで結局、玉依姫の一大事ってなんなんだよ。

陸  :そうですよ。なによりまずそれが知りたい。

賀茂 :そ、そうでした。まずはそれを話さなければ……
全く、このメンバーだと話が前に進まなくて困るよ……。

晶  :ま、発端はお前のセリフだけどな。

賀茂 :むぅ……! とにかく! 今日みんなを呼んだのは他でもない!
我々と、そして我らが玉依姫が出演する『真・翡翠の雫DS』の
広報計画を練るためだ!!
全国のお茶の間に、我らが玉依姫の魅力をお伝えする!!
これも守護者の務めというものじゃないかなと!!

小太郎:お、なになに?
メガネの話にしちゃマトモな話じゃん!

陸  :賀茂さんにしては建設的ですね。

克彦 :メガネウザイ。

賀茂 :最後の人、ただの悪口でしょそれ!!

克彦 :そうだが?

賀茂 :そうだが!? ひょっとして、君ら僕のことが嫌いなのか!?

一同 :…………。

賀茂 :だまるなぁああ!

御子柴:そうだぞ、お前たち……厳しい真実より、優しいウソが人を救うこともある。

賀茂 :おう……御子柴さん……あなたまで……。

晶  :まあ賀茂の評価はなんでもいいよ。
で、広報計画ってどうするんだ?

克彦 :大体……広報計画と言っても、俺達だけではどうにもならないぞ?
拡声器でも持って宣伝しながら街を練り歩くか?

陸  :そんな守護者はいらないとか言われそうだ……。

亮司 :うん。完全にマイナスプロモーションだね。

御子柴:『かくせいき』とはなんだ? うまいのか?

陸  :いえ、食べ物じゃありませんよ。
というか御子柴さんそればっかりですね……。
お腹減ってるんですか?

賀茂 :心配しなくていい!
このエリートの中エッリートであるこの僕が、
それしきのことを考えていないとでも?

晶  :ん? なんか考えがあるのか?
そうだったぁあとか言って、頭抱えてオチかと思ったのに。

賀茂 :こんなところでこの話にオチをつけてたまるか!!
僕には協力なツテがある!! そう!
典薬寮という巨大なツテがな!!

小太郎:えー……典薬寮に頼んのかよー……。

賀茂 :贅沢を言うな! ひとりでも多くの方に我々のゲームを買っていただき、
楽しんでいただくためにも!!
手段など選んではいられないんだ!
みんなにもぜひ手伝っていただきたい!

陸  :まあ、確かにそうかもしれませんね。

亮司 :そこまで言われたら、協力せざるをえないな。

克彦 :で? 典薬寮で何をするんだ?

賀茂 :ふっふっふ……すでに手は打ってある。
テレビCM、ラジオCM、新聞広告!!
僕の活躍が収められたこのゲームがたくさん遊ばれれば、
典薬寮のアピールになるからと、説得して予算を捻出させたんだ!
名づけて【真翡翠の雫DS広報一年計画】!!!

小太郎:ま、マジですげえ……。

克彦 :行動力のあるバカは怖いな……。

御子柴:『あぴいる』とはなんだ? うまいのか?

亮司 :それなりにおいしいよ。

陸  :ちょっと、亮司さん! しれっとウソつかないでくださいよ!

賀茂 :そこでだ、みんな! 今日はみんなに今回の計画で広報すべき【このゲームの魅力】を
語ってもらいたいと思って集まってもらったんだ!

晶  :ここに来てやっと【なぜ集められたのか】という質問に対する答えが……。

克彦 :本当に話が進まないな。

小太郎:話がかみあわねえんだよなあ。

御子柴:なるほど。 これが世に言う【ちいむわあく】というヤツか。

亮司 :あははは、悪い意味で合ってる。

小太郎:認めちゃダメだろ、それ……。

賀茂 :で、魅力の件なんだけど、
【これは魅力】っていう案はありますかっ!?

晶  :魅力……いざ言われると、難しいな。

陸  :自分のことも含むだけに、
少し恥ずかしい感じがしますね。

賀茂 :そうなんだよ、
考えてみるとこれが結構難しい。

克彦 :そんなもの、ひとつしかないだろう。

賀茂 :ひとつしかないんですか!? う、うかがいましょう……。

克彦 :それは……。

一同 :それは!?

克彦 :俺が出ている。

……。

…………。

晶  :なんだそれ! お前以外ウリがないのかよ!! ふざけんな!

克彦 :ふざけてはいない!
俺がずば抜けてウリになっていると言ってるんだ!!

陸  :小太郎……お前の兄貴ってあんなでいいの?

小太郎:あ、あははは。兄貴、自分に対する自信はすげえから。

克彦 :当然のことを言っているだけだ。メインキャラは俺だしな。

晶  :いつからそうなったんだ!! メイン俺だし!!

亮司 :ふふ……そうとは限らないんじゃないかな。

晶  :限りますよ! 何言ってんですか亮司さん!

陸  :ついにバレてしまいましたか……俺がメインキャラだって……。
秘密にしていたのに……。

晶  :いつそんな秘密ができた!!

小太郎:全く、お前はわかってないな。
よく言うだろ? 【本当のことが真実とは限らない】ってさ!

晶  :限るだろ!! なんでちょっといいこと言った風の顔してんだよ!
辞書見ろ! 【真実】って項目を見ろ!
【本当のこと】って書いてあるだろ!
っていうかお前、もう俺がメインキャラって認めてるじゃないか!

克彦 :メインキャラというのは、
俺の定義では【玉依姫に最も愛された男】のことを指す。

晶  :お前の定義なんか知るか!!

克彦 :そして、この定義では俺がメインキャラということになる。

晶  :ならねーーーーー!!

陸  :俺も晶さんの意見に賛成。
その定義なら愛され系の弟である俺がメインキャラだ。

晶  :お前もボケてくるのか!!
いつからその定義が公式になったんだよ!
あと、愛され系の弟ってなんだよ!
自分で言うなよ! 気持ち悪いよ!

御子柴:ふむ……御子柴メインキャラ説急浮上か……。

晶  :いや、っつーかあんた敵じゃないですか!
あんたが言うセリフじゃないですよ!

御子柴:よく言うだろう【本当のことが真実とは限らない】と。

晶  :あんたもかぁああ!! 浸透させるのやめてくださいよ!!

賀茂 :えぇい!!
みんな自己主張が激しすぎるぞ!!
こんなことではちっとも結論にたどり着かない!

晶  :おお、賀茂がまともだ……これはこれで不安になるな……。

賀茂 :僕はどうしたらいいんだ!?
というか、まるで僕が『いつもおかしい』みたいな言い方はやめてくれ!

亮司 :え? 違うのかい?

賀茂 :違いますよ! なんですかその、素の反応!
僕だって傷つくんですよ!?

陸  :むしろ、自分がまともだと思ってる賀茂さんがすごい……。

賀茂 :全く!
僕たちの今後に関わる大切な会議だって言うのに。
もう少ししっかりしてくれたまえ!

小太郎:う……まさかこいつに叱られるなんて……。

亮司 :いやあ、でも言ってることはごもっともだよ。

克彦 :ならば早く話を進めろ。
いつまでもこんなくだらない話をしてる暇はないんだ。

陸  :いや、あなたから話がずれていったような気が……。

賀茂 :さあ、いい加減話し合いを再開するよ、みんな!

亮司 :了解。

御子柴:準備はできてる。

賀茂 :議題は【誰が一番玉依姫に愛されてるか!!】

一同 :おーっ!!

晶  :議題が変わってるじゃねえかーっ!!!


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